第7話 電話
「ほれ、サービスだ」
作戦会議中の俺達の席に、大輔兄が差し入れを持ってきてくれた。
俺にはコーヒー、北条さんにはなぜか特大パフェだった。なにこの差別化。
「ふああ……いいんですか?」
北条さんは瞳をキラキラさせながらパフェを見つめる。
「もちろん! これからもうちの店と、ついでに凛太郎をよろしくね」
「はい!」
え? よろしくしてくれてるの?
ヤベエ、嬉しい。
「うふふ〜美味しい♪」
北条さんもご満悦のご様子。
俺もコーヒーに砂糖を大量投下し、かき混ぜてから口に含む。
うん、美味い……ってアレ? 北条さん、なんでそんな目で見てるの?
「えっと……まあ、いいんだけどね。それより、如月くんのほうはどうするの?」
「うーん、とりあえずRINE打ってみる。それで反応が無かったら、まあ……家に行くしかないか……」
「そうだね。もちろんだけど、ボクも一緒に行くからね」
「え!?」
北条さんも来るの?
いや、そりゃ俺もアイツん家行くの気まずいから、一緒に来てくれると心強いけど……。
「なにその「え!?」って」
「いや、その……なんか悪いなー、と」
「はあ……これはボク達二人でやってることなんだから、“悪い”とかないの。だから、ね?」
なんなの北条さん、天使なの?
遠慮なく甘えるぞ?
「……分かった。じゃあ北条さんよろしく」
「うん。そうと決まれば、早速RINEしようよ」
「ああ」
俺はスマホを取り出し……ああ、控室だった。
「ごめん、スマホ控室に置いてあるから取ってくる」
「うん」
俺はパタパタと慌てて控室に向かい、ロッカーに入れてあるスマホを取り出して席に戻った。
で、北条さんがなんで顔を赤くして俯いているのかってことなんだけど。
「大輔兄、ホント何してくれてんの? 伯母さんに言いつけるからね」
「いや待て。誤解してるぞ」
「問答無用」
はあ……まさかあの尊敬してた大輔兄が北条さんに対して執拗にセクハラするなんて……。
「北条さん……本当にごめん。絶対罪は償わせるから……」
「ふあっ!? 待って待って、別に何もされてないから!」
北条さんはなんて優しいんだ。こんなろくでもない従兄を庇うだなんて……。
「ありがとう……もう二度とこんなことはさせないって誓うよ」
「ホントに大丈夫だから! も、もう、それよりスマホは取ってきたの?」
「もちろん」
そう言うと、俺はおもむろにスマホを見せた。
「よし。じゃあ遼の奴にRINEを……」
俺は様子を窺う文面のメッセージを打ち込み、RINEを送った。
「さて、後は連絡を待つだけだ」
せめてちゃんと読んでくれればいいんだけど……。
「そ、そうだ! ほ、ほら立花くん、これからもこうやって作戦会議したり情報の共有とかしたほうがいいと思うんだけど!」
「ああ、うん、そうだね」
「そ、それでね、その、ボク達もRINE……交換しない?」
確かにそうか。
北条さんにいつも付き合ってもらうわけにもいかないし、関わってもらった以上、進捗とかも気になったりするだろうし。
「うん、そうだね。じゃあ……」
俺はRINEのQRコードを表示させた。
「あ、ありがと。それじゃ……」
北条さんがカバンからスマホを取り出してQRコードを読み取る。
すると、ピコン、と音が鳴ったので通知を開く。
お、北条さんは熊のアイコンか。なんだか可愛い。
なのに送らせてきたスタンプが劇画タッチなのはなぜに!?
「うん、じゃあ登録しとくね」
「えへへ、よろしく。じゃ、じゃあこれ以上バイトの邪魔しちゃ悪いから、今日はもう帰るね」
「あ、うん、その……北条さん、今日は本当にありがとう」
「いいのいいの! それより、これからよろしくね!」
「こちらこそ!」
俺は店の前まで出て彼女を見送る。
北条さんは、見えなくなるまで何度も振り返って手を振ってくれた。
「いやあ、今日はイイモン見れた。またいつでも桜ちゃん連れてこいよ!」
「大輔兄がセクハラしなければね」
「まだ言うか」
店に戻るなり大輔兄がそんなこと言うモンだから、少し照れくさくなって悪態を吐いた。
さあ、さっさと仕事に戻ろう。
◇
バイトも終わって家に帰り、風呂から上がるとベッドに倒れ込んだ。
今のところ、遼から返事はない。
既読にはなってるから、一応生きてることは確認できたけど……。
——ピコン。
お、メッセージが来た。
北条さんからだ。
なになに、『返事来た?』か。
ええと、『まだ来てない』で送信、っと。
北条さんにメッセージを送り、スマホをベッドに放り投げた。
——ピコン。
あれ? また北条さんだ。
『電話していい?』……って、望むところだ。
俺は北条さんにRINE電話を掛ける。
『もしもしっ!』
出るの早っ!
「もしもし、北条さん?」
『う、うん、そうだよ』
「そ、そっか」
『う、うん』
なんだこれ、超緊張する。
そのせいで会話がもの凄くぎこちない。
「そ、そうだ。さっきもRINEで送ったけど、返事はないよ。だけと、とりあえず既読にはなってるから、見てはいるみたい」
『そ、そっか。でもそれだと、やっぱり直接会うしかないかー』
「うん……」
はあ……アイツん家行くのか……。
またゆず姉に色々言われそうだなあ……。
『それだったら早いほうがいいし、明日の放課後に行こうよ。立花くんは明日は大丈夫? ほら、バイトとか……』
「ああ、うん、元々明日は定休日だから大丈夫だけど……北条さんこそ部活とかしてないの?」
『うん、ボクは帰宅部だから放課後は全然空いてるよ』
そうか、北条さんは帰宅部か。
まあ俺もバイトあるから帰宅部だけど。
「じゃあ明日の放課後、遼の家に行くってことで」
『オッケー。それじゃもう遅いし……立花くんは寝てないんだから、今日は絶対ちゃんと寝るんだよ?』
「お、おおう……了解」
『それじゃね、お休み』
「うん、お休み」
スマホをタップし、通話を切る。
「ふう……」
俺は一息吐くと、ベッドの上でうつ伏せになり、両足をばたばたさせた。
「もうなんなんだよ北条さん! 超カワイイんだけど!?」
今日一日のことを思い出し、俺はいてもたってもいられなくなった。
ていうか何? 北条さん凄く優しいんだけど!?
ホント今日一日でイメージ一気に変わったわ!
おまけにボクっ子巨乳なんて最高かよ!
……はあ。
イカンイカン、俺は何を夢見てるんだ?
何を取っても平均値の俺にはワンチャンすらねえだろ。
寝るか……。
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