第23話 船、船、船で岡山から神戸まで

 これは、フォートラベルに掲載していた旅行記を手直ししたものです。

 尻切れトンボで終わっていたものを、加筆して、改めてこちらで披露いたします。


2012年4月28日土曜日。


 どうもここの所マンネリ気味だったので、それを打破すべく、仕事先の岡山から自宅のある(拙著の宣言より約半年遅れたが、その望みを果たして今住んでいる)明石まで戻るにあたり、できるだけ船を使ってみようと思った。


 朝9時前。

 まずは、宿泊先から歩いて両備バスのバス停へ。

 よくよく考えてみれば、このバスは、戦前の軽便鉄道・三蟠鉄道のルートに近いところを通って新岡山港まで行く。土曜の朝、乗客は5ないし6割乗っていて、途中で入れ替わる。新岡山港に到着して、私を含めて10数人が降り立った。


 ここから、小豆島の土庄港行の両備バス経営のフェリーが出ている。

 

 切符を買い、しばしの間待合所をぶらぶらしつつ、電子マネーの利用できる自販機でブラックコーヒーを買って時間をつぶしたのち、さっそくフェリーに乗り込む。乗客は定員のせいぜい3割程度か。

 

 とりあえず、ボックス席にスーツケースを置き、船内を散策。このフェリーにはうどんやカレーなどの定食もある。

 うどんは500円前後。大盛りは200円増し。

 カレーは600円、大盛りが750円だったか。

 とりあえず、あとでラーメンを食べる予定があるので、ここでは何も食べない。

 新岡山港を出航後、階上のデッキに出てみる。近辺の港にいる生物を飼っている桶があったり、温泉なのかどうかは釈然としないが、無料の足湯もあったりで、いろいろ工夫がされている。そこでしばし、足湯につかりつつ、潮風を浴びる。船の周りには、かもめが時々飛んできては去っていく。

 現在は九州島内の運航になっているが、かつて京都と九州各地を結んでいた客車(のちに気動車)特急「かもめ」を想いつつ、足湯につかりながらかもめを見るともなく見て、児島湾の光景を楽しんだ。

 

 それほど熱くない足湯だが、天気は快晴。足湯にかかわらず、体全体が汗ばんできた。フェリーは児島湾を出て、瀬戸内海へと足を進めている。ここらで、冷房も幾分効いている船内に戻る。

 

 しばらくはボックスシートを占領していたが、どうも落ち着かない。そこで、船の前頭部のリクライニングシートに移動し、スーツケースを後ろにおいて、前進するフェリーの光景と、近寄っては去っていくかもめを見ながら、瀬戸内海の船旅をしばし楽しむ。

 日頃のマンネリ感が、瀬戸内海の藻屑と消えていくようで、実に爽快である。


 それほどすれ違う船がなかったのに、数十分もすれば土庄発高松行のフェリーともしばしばすれ違うようになってくる。小豆島はもうすぐだ。


 新岡山港を出て70分。久しぶりのフェリーの旅は、とりあえず、終わり。


 この後、フェリー乗り場に来ていた小豆島国際ホテルの送迎バスに乗せてもらい、ホテルまで行ってパンフレットをもらった後、近くにある小豆島ラーメン「醤(ひしお)」に行くことにする。

 今回は、正直言ってこのラーメンが目的である。

 この店は、近年岡山駅前にも店を出していて、そちらはしばしば行くのだが、小豆島限定のラーメンもあるとのことなので、これを機会に食べなければ損である。

 

 というわけで、小豆島限定の「島ラーメン(480円)」を注文した。

 このラーメン店は替え玉がいくらでも無料である。その替え玉も、海苔とチャーシューの切れ端などが載っていて、実にすごい。これだけでも商品として成立するぐらいだ。

 結局、替え玉4つも食べてしまった。一般的に替え玉をしている店に比べてこの店はやや替え玉の提供がゆっくりしているが、今日のような急がない日はむしろそのくらいのペースのほうが、ゆっくりと楽しめる。

 しかも、目の前は瀬戸内海だ。

 そんなところであくせくと替え玉をスープに入れては食べてもしょうがない。


 ラーメンを食した後は、近くの小豆島国際ホテルに戻り、オリーブサイダーを飲んだ後、送迎バスの便があったので、それに乗って再び土庄港に戻った。


 そのあとは、後々のことも考えて、フェリーではなく高速艇で高松に出ることに。

そうして13時40分発の高速艇に乗ること30分。

 久しぶりの高松に到着した。


 そこからはジャンボフェリーの乗り場までバスで移動して、瀬戸内海を一路神戸まで。住んでいる明石の海辺を船で移動するのは、格別だ。

 明石海峡大橋をフェリーはくぐる。いつもは陸地の側からこのジャンボフェリーを見ているのだが、今日ばかりは、その逆である。

 大橋をくぐると、神戸は、もうすぐ。4時間ほどの船旅も、ここで終り。

 フェリー乗り場からは、三宮の駅前まで送迎するバスが出ている。料金は、200円。そのバスで三宮の市街に出た後、そのまま西明石行の各停で自宅へと戻った。

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