第2話 神様だって失敗する
「はい?」
一瞬、神様が言っていることが分からなかったが、少しすると飲み込めた、俺はすでに死んでしまったらしい。
神様はここは神界と言っていたが俺にとってはある種あの世のようなものかもしれないな。
自分の死に対して妙にすんなり飲み込めているのはたぶんさっきの後光のおかげだろう。
「不幸な事故での、覚えておらんと思うがお主の上に看板が落ちてしまったのじゃ」
神様が俺の死んだ時の事を説明してくれた。
俺がホビーショップに向かう途中、近道として人通りの少ない道を歩いていたときに頭の上に老朽化した看板が落ちたのが死亡原因だとか、地元ではちょっとしたニュースにもなったくらい大きな事故だったという。
ただ、不幸中の幸いというか、他に巻き込まれた人はいなかったらしい。
それは良かった。
まあ日頃から運がないとは思っていたけど、死に方も運がないな。
ニュースにもなったというし、親戚の連中を悲しませて申し訳ない。
「運が無かったんですね、仕方ないです」
「あっさりしとるの」
神様は俺のリアクションが思ってもではなかったようだ。
「不幸、不運には慣れてますから、それに神様が落ち着かせてくれましたから」
本当に不幸、不運ばかりの人生だったからな、いつか幸運があると思って生きていたんだけど死に方まで不幸な事故とは。
まあ、ある意味自分らしい死に方かな、ここまで不幸体質が貫かれると変に清々しく感じてしまう。
と自分の死に方に納得していると、神様が申し訳無さそうに口を開く。
「その不幸な体質なのじゃが、わしのせいなのじゃ」
「どういうことです?」
俺の不幸な人生は俺自身の努力不足や前世の行いが悪いからだと思っていたのだが、まさかの神様からのカミングアウトだ。
下手すると自分の事故死云々より衝撃が大きいかもしれない。
「じつはの……」
神様の説明によると、人間などの生き物は運勢が産まれた時に決まっていて、多少運が良いとき悪いときの波はあるが基本的に運が良い人は死ぬまで運が良く、運が悪い人は死ぬまで運が悪い。
これは神様が決めることなので生きているうちにいくら努力してもほとんど変わらない。
しかし運が良いだけでは幸せにはなれず、運が悪くても運だけでは死ぬことはなく、あくまで生きている者の個性でおさまる程のものらしい。
ん?
「神様、説明の途中すみませんが、私の死に方もそうですが、世の中に不運な死といった言葉があるのですがどういうことですか?」
説明を聞いていてどうしても気になってしまったから口を挟んでしまった。
俺のように自分には原因のない事故で死んでしまう人や刑事ドラマではないが、事件に巻き込まれて亡くなる人、自然災害などに巻き込まれて命を落とす人もいる。
そういうことはニュースなどでは不幸な出来事、不幸な死と報道される。
つまり、あまり言いたくはないが不幸、不運な死とは一般的なものであるということだ。
これは神様が言っていることと矛盾してしまっているのではないだろうか?
「基本的には説明した通り不幸、不運だけでは死なないように調整しとるが、たまに失敗してしまうんじゃよ」
失敗してしまうんじゃよって、それでいいのか神様よ。
「神にだって失敗はあるんじゃ、そういう時には特別幸運にして生まれ変わらせるんじゃ」
神様は俺の心を読んで気落ちしたのか、トーンと若干落として、そのあとの説明を続けた。
生命は死んだら生まれ変わるという転生輪廻の考え方から、生まれ変わった後の運勢は生まれ変わる前の行動である程度決まるという運の仕組み、そして神様がその運の調整、管理を一括で行っているという説明を受けた。
そして、神様とはいえ完全無欠ではないのでたまにそこの調整を失敗して特別不幸な人(生命)が生まれる事があり、その場合はその命が次に生まれ変わるときに特別幸運にして釣り合いを取っていたという。
しかし俺の場合は、
「失敗を重ねてしまって3回連続の特別不幸な人生を送ったと」
本来、特別不幸な運命を背負って生まれた命は短命で、その死に方で神様が気付いて幸運な運命に生まれ変わらせているのだという。
そもそも、特別不幸な命を産み出さなければいいだけの話してはないのかと聞いたところ、
「命は皆幸せになろうと努力して生きる、その結果来世では幸運な命が増える。
しかし運命というのは世界全体で釣り合いが取れておらんといかんのでな、どこかにしわ寄せが行ってしまいそれが不幸な命となってしまう」
とのこと。
神様も心苦しいらしく、不幸な時間は短い方がよいだろうと不幸な命を短命にし、かつ罪滅ぼしも含めて次の人生を幸せに過ごせるようにと不幸にした分の幸運を与えて生まれ変わらせるのだという。
しかし、神様が見落とし不幸な運命の命がそのまま生まれ変わってしまうと、不幸体質がより不幸を呼び込んでさらに不幸な運命の命に生まれ変わってしまう。
そして、俺の前世の方々はその不幸に足掻きつつ短命とは言え無いほどに生き延びた為、神様の目から2回もすり抜けて不幸体質をより濃くして来たらしい。
ところが俺が引き継いだ不運、不幸に耐えられず27歳という若さで死んでしまった為になんとか神様の目に留まり今説明を受けているのだという。
「すまんの、しかも不幸によって次の生まれ変わりが魔王に決まってしまっているのじゃ」
そしてその事を神様が謝りつつもさらに不思議な単語を口にしたが俺にはすぐに理解できなかった。
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