最終話(1/3)
「……かっぱ」
悠里の正体を聞き、水掻きという証拠も見た香椎さんは、呆然としていた。
「はい……。本当はあまり人に言うようなことじゃなくて隠していなきゃいけないんですけど、大切な友達の夏希さんにはこれ以上黙っていたくなくて……」
俯き、今にも消え去りそうな声でそう言う悠里を、香椎さんは黙って見つめていた。
「き、気味悪いですか……?」
しばし香椎さんの言葉を待っていた悠里だったけど、無言の圧力に耐え兼ねてそう訊ねた。
香椎さんは一度ゆっくりと目を閉じ、答える。
「……正直、ちょっと怖い」
「っ!」
びくりと身体を震わせ、悠里が小さく一歩後ずさった。
そう甘くはなかったか……。
後でなんて悠里に声を掛けよう、そう思った瞬間――
「――けど、平気」
そう言って、香椎さんは悠里を抱きしめた。
「えっ……」
「前にも言ったかもしれないけど、私、幽霊とか妖怪とか、そういうのホント駄目なんだ。悠里ちゃんじゃなくて知らない誰かだったら、たぶんかなり怖かった」
なんだか見ない方がいいんじゃないかと思いつつも、その動向を見守る。
「けど私は知ってる。悠里ちゃんの性格とか好きなものとか、そういう中身の部分を知ってる。私の目の前にいるのは、河童じゃなくて、柚木悠里……だから大丈夫」
「夏希さん……」
悠里もおずおずと、香椎さんの背中に手を回す。しばらくそうして抱き合っていた。
「あのさ、もしかしてなんだけど」
「はい?」
「悠里ちゃんが河童ってことは、親戚の春樹くんも……」
……そうかそうなっちゃうのか。
あ、いえいえ、違います! と悠里が俺も協力者なことを説明する。
「なるほどねぇ……。色々変だとは思ったことあるけど、そういうことだったとは。……なんか妬けちゃうな」
「え?」
「んーん。こっちの話。それよりこの話ってゆゆにはしたの?」
「いえまだです。ちょうど今水やりしていると思うのでこの後行こうかと」
「そかそか。まぁあの子は好奇心の塊だし、全然気にしないと思うけど」
「だといいんですけど……」
「大丈夫大丈夫。ほら行っておいで」
「はい!」
元気よく返事をして、悠里は教室を後にする。
俺もついて行って様子を見なきゃと思った瞬間、
「――やっほ。春樹くん」
少し開けていた扉のその隙間に手が掛かり、香椎さんが顔を覗かせた。
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