第7話(3/8)
園芸部の活動を終え、俺達は家路を辿っていた。木苺さんの家は全くの逆方向だから校門で別れて、すぐ悠里と二人きりになれたのだけど、往来がある場所でする話でもないので、適当に園芸部の話をしながら家がある山に入るまで待った。
別に悠里がよそよそしいとはいえ、喧嘩しているわけじゃない。
そしてその時がやってきた。
「最近何かあったのか?」
単刀直入に、最近よそよそしくないか、とは訊けずに若干遠回しになる。
「別に。なんでもないですよ」
こちらを見ずに、ぶっきらぼうに答えた。ただしそのなんでもないは明らかに何かある口振りだった。
「なんでもないことないだろ」
だから俺の口調もつい荒くなってしまう。悠里がむっとしたのが分かった。
「春樹さんには関係ないことです」
「関係ないって……」
そう言われてしまっては取り付く島もない。
悠里は早足で先を歩く。
そして俺の方を見ないまま言った。
「春樹さんは一体私の何なんですか? 脅して協力させてるだけの関係でしょう?」
「いやそれは……」
「だったら最低限のことだけしていればいいんです。余計な気を使って友達作らせたり部活入らせたりしなくてよかったんです」
早口でまくしたてるように言われたその言葉に、俺は頭を横から叩かれたような気がした。
「余計……だったのかよ……」
あんなに楽しそうにしてたじゃないか……。
思わず立ち止まって、すがるように言った俺に、悠里も足を止めて言った。
余計ですよ、と。
そして吐き捨てるように呟く。
「……そしたら、こんな気持ちになんてならなかったのに」
「こんな気持ち?」
「っ! ……なんだっていいでしょう。どうせ人間に私の気持ちなんて分からないです!」
そう言って悠里は走り去っていく。
走れば追いつけたけど、追いついたところで掛ける言葉も見つからない。
俺はただその場で立ち尽くした。
――――――――――――――――
「ゆ、ゆずゆず、お昼食べよっ」
「すみません。今日は一人で食べたい気分なので」
そう言って悠里はコンビニの袋を二リットルのペットボトルを持って教室を出ていった。
「……今日は、っていうか今日も、だよな」
傍らに立っていた透が呟く。
悠里と喧嘩してからの日を端的に表すなら、最悪だった。
俺と険悪になるだけじゃなく、香椎さんや木苺さんとの溝も深まっていた。出会った当初のように壁を作り、ああして昼食も一人で取るようになっている。
そして何より、素性を守るための朝夕の務めである池の見張りだ。完全にお払い箱にされてしまったようで、先日は待ちぼうけを食らい、おかげで遅刻しそうになった。どうやら随分先に登校しているらしい。
「……私が頼んだせいだよね? たぶんそうだよね?」
「いや……」
香椎さんが小声で申し訳なさそうに言ってくる。確かにきっかけはそうではあるけれど、時期が早まっただけであって、いずれこうなってた予感がする。
「ゆずゆず、ホントどうしちゃったんだろ……」
フラれた木苺さんが弁当が入った巾着袋を持って力なく帰って来る。
「やだな。このまま前みたいになっちゃうの……」
そう呟いたのは木苺さんだったけど、たぶん皆同じ気持ちだった。
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