第3話(7/8)

「二人の苗って、どっちもきゅうりなんだよね? 好きなの?」

「あー、うん、悠里がね」


 最初はオクラにでもしようかと思ったけど、悠里が、春樹さんも作ったら倍食べれるじゃないですか、と言って半ば強引にきゅうりにさせられた。

 悠里って、正体がバレないために控えめになっているだけで、基本的にわがままな性格をしているように感じる。


「へぇ。きゅうりが大好きだなんて、河童みたいだねー」

「「……ッ!」」

 もちろん冗談だろうが、思わずどきりとする。悠里を見ると同じように顔を強張らせていた。


「き、木苺さんのはプチトマトだよね。好きなんだ?」

「うーん、まぁ嫌いじゃないけど、特別好きってわけでもないよ?」

「じゃあなんで」

「本当は苺がよかったんだけどねぇ。季節じゃないって言われて」

 木苺という名前だけあって苺には愛着があるのかな。


「だからビジュアル的に似てるプチトマトにしてみました」

「なるほど……?」

 似てるっちゃ似てるけど、似て非なるものだと思う。まぁ本人は満足そうだしそれでいいか。


 自分の苗は全て植え終えたので、他の二人の作業を見やる。


「……っ!」

 瞬間、俺は思わず目を逸らした。


 俺の対面では、木苺さんがしゃがんでせっせとプチトマトの苗を植えている。俺もしゃがんでいる。そして俺達は今、制服だ。……なんだか恥ずかしさと後ろめたさからまどろっこしい表現をしようとしたけど、つまるところ木苺さんのパンツが見えた。


「ん? マッキーどうしたの?」

「え、あ、いや、別に」

 平静を装ったつもりが不自然だったんだろう。木苺さんにそう訊ねられて、より一層挙動不審になる。ここ最近、悠里のことがあって誤魔化すのは得意だと思っていたのに。というか別に故意じゃないんだから、慌てる必要なんて何一つないのに。


「あ、さてはスカートの中見たね? やらしいなぁ~」

「いや、見たっていうか見えたってだけで!」

「春樹さん最低です……」

「いって!!」

 見られた当人はいたずらそうに笑みを浮かべるだけなのに、なぜか悠里が俺の太ももを思い切り殴った。


「まぁまぁゆずゆず。別にパンツ見られたわけじゃないからさ、許してあげようよ」

「「え?」」

 悠里と俺は揃って首を傾げる。


「ほら、ショートパンツ履いてるし」

 と言って木苺さんがスカートを捲り上げると、確かに黒いショートパンツがそこにあった。本人は下着じゃないから気にしないのかもしれないけど、太ももが露わになって十分扇情的だった。


「さすがにインナー無しで安易にしゃがんだりしないよ。ねぇゆずゆず?」

「え……? …………あ」

 悠里のその態度に、もしかして、と言って木苺さんが素早く悠里のスカートの中を覗き見る。悠里も慌てて裾を押さえるが遅い。


「……マッキー、ゆずゆずの前に座るの禁止ね」

「……うっす」

「……見たら殺しますからね」


 殺される条件が増えた。

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