第2話(2/5)

「えーっと、昨日も言ったと思うけど、午前中は丸っと身体測定と体力テストあるからー。女子はここで、男子は隣の教室に移動して着替えることー。着替えたらひとまず体育館。その後は今から渡すプリントにあるように移動するようにー」


 という、担任の土橋先生のだるそうな案内を聞いて、


「……これはいきなりピンチなのでは?」

 俺は後ろに座る柚木に小声で話しかけた。


「身体測定って大丈夫なのかよ」

「何がですか」

「いやほら、身体を調べるってことは正体バレない?」

「別に大丈夫ですよ。レントゲンとか使われなければ」

「あ、そうなの」

「……なんですか? もしかしてフォローを理由に私につきまとって、私の体重やバストを把握するつもりだったんですか? おぞましい……」

「違ぇよ!」

「ふーん……。まぁいいです。ほら、ホームルーム終わりましたよ。女子の着替えを堂々と覗くつもりですか?」

「だから違ぇよ!」


 まったく。会話するたびに罵倒されている気がする。

 こんな調子がこれから三年間続くのだろうか。正体がバレないようにフォローする気遣いよりも、こっちの方が精神的に疲れそうな気がする。

 気が重くなりながら隣の教室に移動し着替え始めると、透が話し掛けてきた。


「……お前、柚木さんと知り合いだったん?」

「いや、違うけど」

「じゃあ昨日の今日か。何があったんだよ」

「……なーいしょ♪」

 当然経緯なんて言えるわけがないし、上手い言い訳も思いつかなかったので、唇に指を当ててお茶目に誤魔化した。キモいと言われた。


「まぁなんにしても、柚木さんって壁すごそうなのに、あんな仲良くするなんてすごいなお前」

「仲良くはないでしょ」

 さっきもおぞましいと言われたばかりだ。


「ほら先行くぞー」


 このまま話しているとボロを出しそうだったので、手早く着替えを済ませて体育館へと向かった。

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