第3話

「と、いうことでお前は小学生に転生した訳だ」


「は?」


衝撃のカミングアウト(2回目)を受ける苧環少年。さて、どうしてこうなったのか、少しばかり時を戻そう。


「いや、結局誰ぇえええ?!」


話はこの地点まで遡る。


「誰って、お前の超絶可愛い幼馴染の百合ちゃんだが?」


当然全く覚えのない顔である。いわば幼馴染のネガティブ・オプションといったところか。いや、こんな押し付けがましい幼馴染があるか。


「俺の幼馴染は清楚系って決まってるんだが?」


争いは同じレベルの者同士でしか発生しないことが証明された瞬間である。


「それはともかく早く支度しろよ。俺まで遅刻させる気か?」


「いや、それより諸々の事情を…って、俺っ子?!」


「遅れてんなぁ。俺が女の一人称なんてのは江戸時代ですら常識なんだぜ?」


平成の世では一周まわって最先端であることをここにお知らせしておく。


「てか、それより準備よ準備。タイムイズマネー」


「いや、それよりどうしてこうなったか…」


「はいはい、追って説明するから。とりあえずソレに着替えろ」


因みに、この説明するは友人を遊びに誘ったときの、行けたら行くと同程度の信用度である。


「嘘つけ、ぜってーこのまま煙に巻くつもr…」


「はいはい、おばさん おじさんいってきまーす」


「はい、いってらしゃ〜い。あ、車には気をつけるのよ!」


「ぐすっ、祐が…祐が…」


さて、こうして一行は無事門出を飾り、話は冒頭へ戻る。


「お前は残念ながら死んだ。と、いうことで小学生に転生した訳だ」


「すごい、何一つ説明になってない」


やいやいと道を往く一行。傍からみれば、実に可愛らしい模範的小学生であるが、会話内容は残念ながら中学二年生寄りである。


「めんどくせぇなあ。どうせ死んだんだから、前世とか気にすんなよ」


「いや、そんな割り切れてたまるかよ」


そんな悟りきった高僧みたいな心持ちの人間はそうそう居ない。


「僧だけに?」


「は?」


出来はsosoだな、と一人大爆笑の女子小学生。笑いのセンスの方は、中学生を飛び級しオヤジ級に到達したらしい。


「あはは、いや失敬失敬。流石に急にこんなことになったらビビるわな。うん」


ごほん、と露骨に咳払いする少女。ようやく真面目な話をしてくれそうな雰囲気である。


「私は神だ」


前言撤回。やっぱりろくでもない奴に間違えない。


「失礼なマジモンの神だぞ?ロマンスの」


これが神なら世も末である。


「そもそもお前は転生なんて非科学な現象を現在進行形で体験中なんだぜ?今更神の一匹や二匹でてきても何らおかしくはないだろ」


「神の単位は柱な」


どうにも胡散臭い自称神である。


「はー面倒くさ。細かい男はモテないぜ?苧環永世童帝」


「グハッ」


クリティカルヒット。その称号を将棋のタイトルホルダーみたく呼ばれるとは驚きである。


「なんの栄誉でもないがな、種の繁栄に寄与することない変異体め。親に孫の顔見せてあげたいとか思わない無いわけ?」


「グハッ」


母の口癖は彼女つくりなさいである。というか、ここ三年は口を開けばそれである。


「まあもっとも、そもそもそんなことは個人の自由だとも思うがな。童帝でも偉大な人間は五万いる訳で」


「だろぉ?!」


だろぉ?!


「さりとて童帝王、貴様は童帝でいることを是としその信条に殉じたのではない。童帝であることを否としながら、尚も童帝であり続けたのだ!」


「グハッッッッッッッツツツ!」


大ダメージである。再起不能不可避。


「あゝなんと、なんと救い難き愚かな人間!しかし、そのような愚かな人間にも慈悲深き神は救いを与えるのです」


「OMG!!」


「馬鹿にも分かるように三行で説明しよう。恋愛しろ!以上」


三行どころか一行で説明してくれる優しさ。これは神に違いない。


「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや。温め過ぎて腐るくらいには準備万端だろ?こんなチャンスそうそうないぜ」


かくして童帝は恋を学ばんと学び舎の門扉を叩く。彼の第二の生がどのようなものになるか、それは神のみぞ知ることである。


「幕上げ早々不安ってか?」


前略

どうやら今回もダメそうです。草々

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