第24話 みえないふたり

「赤蛍?」


聞いたことのない単語だったので、鸚鵡返しに聞いた。


「ああ、この目隠しの布のこと。向こう側はよく見えないけど、たまに強い光があたるとその部分がぼんやり光るだろ?それが蛍みたいでさ。赤いし」


そんなこと考えたこともなかった。

ただ自分の視界を奪っているこの布を、そんな風に捉えられるだなんて、やっぱり心に余裕があるんだろうな。

本気を出せばこんなところからすぐに逃げ出せるんじゃないだろうか。なぜそうしないのだろう。なぜそうしてくれないのだろう。


「ミギテさんって、とんでもなく強かったりします?」


「ん、どうしてそんなこと聞くの?」


かすかに、笑う雰囲気が含まれた質問だった。

だって、と続けるつもりでいたのだが、どうでも良くなって来た。

この人の不思議な空気がそうさせている気がする。今は今で、このままでもいいのかなと、ここのところ思うようになってきている。


「すみません、今のは無しで」


「えぇ、なんだいそれは。気になるね」


今度は確かに笑っていた。

見えてはいないけれど、満面の笑みがそこにある。

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