第7話 ソレビト・トーチカ
謝らなかった。
気持ちが、頭が、全くと言っていいくらいに動かなかった。
だから、彼女の目に涙を浮かばせた原因は僕にあったのに、何一つ謝らなかった。
ひどい言葉を並べたと思う。
今思えば、彼女は彼女なりに精一杯だったんだろう。
だから涙をこぼしたまま、言い返すことなくこちらを見ていたんだ。
思い返すことができるようになった今では、そう感じる。
これは冷静さなどではなく、いまだにどこか俯瞰しているような感覚があることから、やはり帰ってこれていないんだと思う。
いや、見ていたのではなく、睨みつけていたのかもしれない。
悲しみの涙ではなく、怒りからくる悔しさであったのではないだろうか。
条件は同じ、もしくは彼女の方が立場的に弱かったのだから、それを頭ごなしに怒鳴り散らされたものだから、なにをと思って、そして言わずにただただ睨みつけていたように思える。
ただ、そう思えたところで、どんな事情であれ、僕は決して謝らなかったと思える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます