第23話 はじめてのクエスト
パン、パン、パン、パン、パン——
10メルトほど先に置いた缶がはじけとぶ。
パケットがぼくにむかって叫んだ。
「自分で
パケット、なんか上から目線になってるよぉぉぉーーー
「ちゃんと使えば、相手を殺さずに倒せるぜ」
「パケット、あいかわらず百発百中、すごいわね?」
「アリスさんだって、ずいぶん使いこなせてるって思うけど……?」
「だって、わたし、狙ったとこより、いつもすこしズレんのよぉ」
「だいじょうぶですよ。すこしずれても、相手は死にます」
おい、おい、おい、パケットぉ。ぼくはそれがイヤで、『ケンジュウ』をつかわないようにしたンですけどぉ……
「でも、そいつは17回しか使えない。これからむかう先には、スライムが、うじゃうじゃいるんだ。何個も持って戦うなんてむずかしいだろ」
「だから、ベクトールはダメなんですよぉ」
ダメって言った?。いま、ダメって言ったよね。
「仕組みがわかれば、何個も持ち歩く必要なんてないんですから……」
そういうなり、パケットは持ち手の部分から、なにかを引きぬいてみせた。
「ここに金属の弾がはいっているんですよ。ひきがねをひくと、この弾が飛び出すしかけなんです。だから、この弾がはいっているこの容れ物だけを、持ってけばいいんです」
「ほら……」
そう言ってシャツをめくってみせた。
ベルトのまわりに、いくつもの『弾丸入れ』がぶらさがっている。
いつのまにか自分で改良して、ホルダーのようにしている。
「で、こいつを入れ替えれば、ずっと撃ち続けることができるっていうワケです」
「これって撃ってるの?。まったく目に見えないわ」
「そうなんだよ。ぼくらの世界じゃあ、撃つスキルって、目に見えるでしょ。『魔法弾』だってそうだよね。でもこれはちいさいから見えないんだ。撃たれたほうは、なにが起きたかわからない。まったくの魔法さ」
「はん。なぁにが、魔法じゃ。パケット。『魔法弾』にもいろいろあるわ。『打擲弾』や『切裂弾』は見えるが、『閃光弾』や『風切弾』は見えんぞ」
「ロラン。そんなことないでしょ。見えるから『防御魔法』で、ふせげるんじゃないのぉさぁ」
「わしのような一流術士はな!。ふつうのヤツには見えやせん」
「その一流術士でもケンジュウは見えないんでしょ。立派な魔法だと思うけど……」
「はん、いずれ見えるようにしてみせるわい!」
あの街で勇者登録をしてから、ぼくらはスライムの異常発生に悩まされている国『モリト』にむかっていた。
ま、ようするに、害虫駆除だ——
経験値の低い勇者パーティーには、そのていどの仕事しか回してもらえない。
個人のスキルや経験値よりも、パーティーとしての総合力で、仕事のレベルがきめられているので、しかたがない。
数のおおいスライム処理をするには、パワーよりも、手数勝負——
というわけで、鼻くそほどでも役にたてばと思い、ぼくはパケットにケンジュウを持たせてみた。
ーーで、パケットは、ケンジュウの構造を理解すると、あっと言う間に使いこなしてた。なんなら、パケットに教えてもらった、アリスだって、そこそこの腕前になっている。
ときおり、小馬鹿にしてマウントとってくるけど、ぼくにはパケットが、自分の身を守れる力をものにできたことは、すなおにうれしかった。
「ほんと、ベクトールは不器用ね」
ふたりよりもケンジュウの扱いがへたっぴぃなぼくを、パケットに相乗りしてディスってくるアリスにはガマンならなかったけどね。
目的の『モリト』にはいると、すぐにちいさな集落があらわれた。
たしかこのちかくでスライムが大量発生していると聞いていたが……
まったくそれらしい様子がなかった——
しかたがないので、スライムが出現するという洞穴へ直行することにした。
森をぬけていくと、ふいに目の前がひらけて、ひとの手によるものと思われる広場があらわれた。
そこに洞穴があった。
ひらけた先にある山肌にぽっかりと開いた洞穴——
その入り口の真横に、ひとが座っていた。
しろく変色した、みすぼらしい椅子に腕組みをして座って、こちらを見ていた。
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