混濁のラムセリオ

エベル

第1話

「ラム足だいじょぶか?」

「うん!」


青年は幼い子を連れて石のころがるガタガタした補装されていない不安定な道を進む。後ろによたよたついてくる小さい彼女の手をひいてやりたい。転びそうなほどふらふらしていて気が気でないのだ。

そうしないのにはそこまで深刻というわけではないものの理由があり青年は180cmほどラムは彼の太もものあたりに顔が来た。つまり2人には繋いだまま歩けないほどの身長の差があるのである。


「ほんとにか? 街に着くまでおぶってやるぞ?」

「わたしもう赤ちゃんじゃないもん! あるく!」


 一悶着している間に目的地の街の入り口に到着していた。まずは宿を探して旅の疲れを癒すことにする。

そんなに大きな都市ではないのでほんの数分で宿はみつかった。青年はセリオと名前を記帳し案内された部屋にラムを寝かしつけた。

セリオは戦争で家族と引き離されたラムを再会せるために共に旅をしている。自身は先にあるものを探して旅をしていてほんの一ヵ月前に偶然ラム出会う。頼まれたわけでもないが一人で子供が旅に出るのを見過ごせないこととアテのない旅をする点で目的が同じだったのだ。

情報収集は基本的に酒場であり子供がいると入るのが難しい。ちょうどこの時間は酒場が開き始める頃合いだった。セリオはそれらしい雰囲気のあるバーに入った。


「見ねえ顔だな旅のもんか?」

「ああ」


 いかつい男が大人になりたてのガキが来る場所じゃないと言いたそうに絡み酒をした。素直に答えたため喧嘩にはならない様子だ。


「見ての通り俺は成人したばかりで酒場初心者なんだ。マスターのおススメはなんだい?」

「ノンアルコールのカクテルはいかがです?」

「酒場でノンアルかよ女子供と同じじゃねえか」


 いかつい男がウオッカをセリオに奢ると言い出して、タダで酒が飲めると喜ぶ姿を見て笑いだす。悪気はないが度数の高いそれを知らないであろう初心者をからかって泥酔させようとたくらんだのだ。


「おっさんありがとな」

「ま初酒たのしめよ」


目の前におかれた注がれた純度の高く透明なそれを水と同じ要領で一気に流しこむのは必然的だった。セリオは喉を鳴らしながら飲み干しジョッキをカラにするとドン!とテーブルに置く。信じられない光景にビールを吹き出す男に変なやつだと事情をしらない周囲があきれた。


「マスター水にでもすり替えたのか?」

「懐かしいですな……」


 かつてこの店にやってきた旅の男も、同じように度数の高い酒を水のごとく飲み干していた。再びそんな奇跡が起きようとはソムリエ冥利に尽きると目で語っている。


 




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混濁のラムセリオ エベル @zesuswomann

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