第13話 悪魔再来

「やだ、よぅ……いっちゃ、やだ……」


 マダレは昔の夢を見ていた。


 うなされ具合から良い夢でないことは明らかだ。



「なんで……おとう、さん」


 眠ったまま、一筋の涙がこぼれた。


 その姿にレンの胸は痛んだ。


「会いたいに決まっているよな……」


 ただ成り行きでマダレと旅することになっただけではあるが、せめて父親と再会できるまではこの子の保護者として振る舞おうと心に刻む。



「ん……あれ、レン、どうしたの?」


 それまでうなされていたことなどおくびにも出さず、マダレをじっと見つめていたレンに対してマダレが逆に問い返す。


 レンは何も言わずに涙をそっと拭いて、頭を撫でる。



 その直後。


 轟音が村に響き渡る。



「――えっ!?」


 真夜中なのに外が明るい。


 それどころか、真っ赤に燃え上がっている。



「なんだか、あつい」


「マダレが嫌がる炎ってことは、もしかして、また……?」


 レンの嫌な予感は的中した。



「敵襲だーっ!!」


 村中に叫び声が響き渡る。


 レンたちが外に出ると家々が燃えており、崖の上からは巨大な岩が次々と落とされてきた。


「なんだ? 人間か? 竜族か?」


 思い当たる節がなく、彼らは夜襲にただ混乱する。



「ぞくちょーさん、だいじょうぶ?」


 マダレが見つめる先には手負いのツヅミがその場に腰を下ろしていた。


「まったく年は取りたくないものよ。若い頃の感覚で避けられると思ったが」


「じーさん! そこら中に岩が落とされた跡がある。こりゃ単独犯じゃねーな」


 見回りから戻ったノツが荒々しく声を上げる。



「ノツや。裏道から崖を登れたはず。正体を確かめるのだ」


「わかった!」


 飛び出そうとするノツにレンが呼びかける。


「俺たちも行くよ」


「しかし、村の問題に巻き込むわけには……」


「もしかしたら俺たちにも関係あるかもしれない」

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