第11話 混竜族の村

「竜の旅人か。歓迎しよう」


 威厳のある老人と謁見した二人だが、少し予想外な展開だった。


「てっきりもっとぞんざいな扱いを受けるとばかり」


「他の集落ならあるいは。だが、儂らはには寛容でな」


 はぐれ者、という表現に少しトゲがあるが、確かに要件も聞かずに旅人を迎え入れる竜の集落というのは珍しい。



「そんちょーさんはやさしいの?」


「ハッハッハッ、村長どころか混竜族こんりゅうぞくだぞ」


 奥からやってきたのはマダレの倍の背丈はあろうかという偉丈夫。


族長ぞくおさだって!?」


「改めて名乗らせてもらおうか。儂は混竜族の族長、ツヅミと申す」



「えらいひと?」


「族長ってのは一番偉い人だ」


 レンの説明に目を大きく開いて驚いている。



「混竜族の族長を知らないとかとんだ世間知らずだな」


 大男が笑い飛ばす。


「ノツや。たとえ同じ竜族でも、血族が違えば知らぬのも致し方ないこと。彼らは赤竜と青竜だ」


 族長ツヅミはすぐに二人の正体に気づく。


「さすがだな、じーさん」


「やれやれ。跡継ぎとしてはもう少し観察眼を養ってほしいがの」



「さて、ここに来られしは一時の休息か、はたまた目的がおありか」


 改めて二人に視線を向ける。


 声の調子は柔らかいが、その奥にはこちらを見定めようとする意思をはっきりと感じる。



「これを届けに」


 レンが取り出したのは小屋で拾った小石のようなもの。


 それを見た途端、彼らの目の色が変わった。

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