第9話 共有夢

 時として、竜は同じ夢を見ることがある。


 今宵二人は同じ夢を見た。



 とある若い男が、村を出ていった。


 追い出されたといっても良いかもしれない。


 それから別の男が同じく村を出ていった。


 そして彼は辺境の地で独り暮らしていた。


 ほとんど誰も訪れることのない場所。


 来訪者は人間であろうと竜族であろうと歓迎し、食事と寝床を提供した。



 しかしある時。


 何者かがその男の元を訪れた。


 その夜、彼は酷く取り乱し、何かを大切に握りしめていた。


「返さなくては」


 一言だけ。


 そう言い残して、夢はそこで途絶えた。



 翌朝。


 レンの予想は外れ、何事もなく二人は起床する。


 ただ男の姿はどこにもなかった。



 代わりに男の座っていた場所にはかなりの時間が経過したと思われる砂塵、その中にが埋もれていた。


 竜は死んだ時、骨すら残らず灰燼と化す。


 いくつか例外があって、その中の一つが――自殺である。



「あんな夢を見させられて、何もしないってわけにもいかないよな」


 かつて竜であったものの周辺を探る、と小さな宝石のようなものが見つかった。


「たいせつなもの、なのかな?」


「返さなきゃ、って言ってたのはこれか」


 どこにでもある石のようにも見えるし、不思議な力を持つ魔石のようにも見える。



「一宿一飯のお礼くらい、果たすかねぇ」


 その石を懐にしまい、夢の中に出てきた村の場所を思い出す。


 それほど遠くない場所だとレンは判断する。



「よし、行こうかって。マダレ、何やってるんだ?」


「おはかをつくってるの」


「……手伝うよ」

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