第6話 旧態依然

「……あれ? ここ、どこだろ」


 次にマダレが目を覚ましたのは、再びレンの背中の上だった。



「起きたか」


「んーっと、ムラについて、ケムリがすごくって……あれ?」


 少しずつ状況を思い出したマダレが、恐る恐る言葉を続ける。


「そんちょーさん、は」


「…………」


 沈黙でしか答えられなかった。


 そしてそれが答えだと察したマダレは、小さく呟く。


「もう、あえないの?」


「……ああ」


「そっか」


 それで言葉は途切れた。



 レンはマダレを自分の集落へと連れて戻った。


 誰にも見つからないように、人のいない時間を狙って自分の家まで背負って帰った。


「そこの空き部屋を使ってくれ」


 一人暮らしにしては広い家だった。


「俺は村長のところに行ってくるから、絶対に外に出ないでくれ」


「どうして?」


「……ここの集落はよそ者には冷たいんだ」



「おお、レンよ。よくぞ無事に戻った」


「こちらが薬草です」


「うむ。……時に良からぬ噂を聞いたのだが、お前が子供を背負って村に戻ってきた、と」


 レンは絶句した。


 すでにマダレの存在が知られている。


「まあ見間違いだろう。それに杞憂であろうが、言わざるを得ない」


 幾度となく聞かされた言葉。


「お前はのようにはなるな。決して、木乃伊ミイラ取りが木乃伊ミイラにならぬよう」

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