第1話 邂逅
滝つぼの中で泣いている少年がいた。
赤い瞳の、とても美しい少年だった。
「レンよ。お前は外の世界に明るい。薬草を摘んでくるようにと、長老の命だ」
村では若く、昔から何かと用命を言いつけられていたレンにはいつものことだった。
竜族というのは自分たちの集落の外に出ることを酷く嫌がり、できるだけ外界との接触を避ける。
それが彼の生まれ育った集落だけの風習か、竜族全体の慣習か、彼にはどうでもいいことだった。
息の詰まる村から外に出られるなら、どんな内容であろうと構わなかった。
年に数回程度のことだが、もう何十年と繰り返していると地理にも詳しくなる。
自分だけの地図をこしらえて、新しい道を追加したり目印がなくなっていたら削除して別の標を書き記す。
まるで冒険者のようだと苦笑する。
同じような道を歩くだけのお使いを冒険と呼ぶには少し幼稚だが、それでも彼にとって紛れもない冒険だったのだ。
――その出来事に遭遇するまでは。
切り立つ崖の下、きれいな水の流れる川の向こう、滝の落ちる先に目当ての薬草は生えている。
いつものように滝を下る。
青竜族の彼にとって水を操ることは造作もなく、流れ落ちる水と一体になって怪我一つなく滝つぼの中に落ちていく。
はずだった。
しかし彼は見てしまった。
目を奪われてしまった。
水のほとりで一人佇む少年を。
赤い瞳の、美しい少年だった。
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