あかを喰らう

まるろー

あかを喰らう

33の皿の上に肉塊がひとつずつ、いや、ふたつの皿は空のまま主人を待っている。その肉塊うちのひとつに俺は手をかけほほ肉に付いている皮を噛みちぎった。

おっとナイフで皿を切ってしまったみたいだ。けれど耳障りなはずの音が今日はなんだか可愛く聞こえてしまう。

剥がされた皮の下には深紅の肉が待っていた。血の色をしたソースと絡み合ったそれの美しさに思わず見とれてしまう。ひと舐めするとすすり泣きが聴こえるような味がする。

俺は我慢しきれずに獣のような不器用さで肉を貪る。絶えず皿を引っ掻くがそれすらも味に感じてしまってならない。

嗚呼、頬の肉を全て喰い尽くしてしまった。

それを待っていたかのように黄みがかったシャンパンが運ばれてきた。香ばしい薫りのするそれに口をつけることにした。

肉の余韻を楽しみながらシャンパンを廻し少しし落ちついた頃に初めて気づく。

それは肉塊ではなかったと。

俺が喰い、裂いたのは頬ではないと。

それは皿ではなく椅子だったのだと。

空いた皿のひとつは俺が喰ったのだと。

今になってようやく気づくんだよ。彼女らを傷つけていたことに。後悔すらも後悔し、自分をただ罵倒し続けるしかないことに。

そして自分の欲以外、何もかもがどうでもいい屑だったことに。

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あかを喰らう まるろー @marlot

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