幼馴染と結婚のおままごと
海斗はいつも通り玲のアパートに寄って、シチューを食べていた。
料理を作ってくれた玲が聞いてきた。
「今回は自信作どうですか海斗シェフ?」
「美味しいよ。これなら三ツ星、確定だな」
「やった!」
玲は両手を握りしめてガッツポーズをしていた。
また一口すくい、モグモグと
うん。人参とかも食べやすく、白菜がシャキシャキと良い音が鳴っていて。このクリームの濃さが豚の油とマッチしていて美味しさを格段に引き上げている。
玲が首を傾げていた。
「今回は白菜を入れてみたんだけど、美味しいって言ってくれてよかった」
「あ、そうなんだ。違和感なく食べれたよ」
「良かったー。これなら遠慮なく野菜を入れても大丈夫だね」
「あぁ……」
そういえば中学2年の夏休みに、玲が野菜だけしか入れてない、夏野菜カレーを披露してくれたことがあった。その同じ味のカレーを1日半かけて食べたが……野菜しか入ってない地獄のカレーだった……。
「た、たまには肉も食べさせてください」
「善処するよ。中学の時に野菜ばかりのカレーを食べさせちゃったし」
「お願いします……」
そう願いながら三杯ぐらい、おかわりしてしまった。
「あーー食べた……」
俺は床に大の字で寝っ転がる。
洗い物を終え。玲が横に座ってテレビを眺めていた。
「あの女優さん結婚したんだ」
「ん、どれどれ?」
テレビに映し出されて知っている、お笑いの芸能人と女優が「結婚」とテロップに書かれていた。
「本当だ! まさか結婚するなんて驚きだな……」
小学の時に一時期ブレイクして、そこから色んなバラエティに出演していて、結婚をしたから凄いなって思える。
「結婚か……」
玲と結婚したらどんな想像になるんだろうなって、思ったことはある。
どこかの会社とか大学でバイトを終えて帰宅すると、
『玲、だだいま』
玲が出迎えてきて、
『お帰り海斗。今、ご飯の支度するからね』
『ありがとう』
テーブルに座りながら、晩御飯を食べながら何もない、普通の家族として生活するのかな?
雲をつかんでその手の感触がないみたいに、気持ちがフワフワとしている。
玲は結婚についてどう思ってるんだろう……。
「玲お嬢さま。ちょっと良い?」
「ん? なに海斗殿」
「玲は結婚ってどう思ってる?」
「――えっ!?」
目を見開いていて、どんどんと顔が真っ赤になっていってる。
「け、け、結婚て、え!? 海斗どうしたの急に!?」
「結婚て何なんだろうなって。今はこうして高校生だけど、いざってなったら、どうゆう風になるんだろうなって」
「……うーん」
玲が天井の方を見上げて唸っていた。
「昔、おままごをした感じじゃない?」
「どうなんだろ……」
小学生の頃に、玲と一緒におままごとをして、遊んだこともあったけど。
「じゃあ、やってみる?」
「え、おままごとを、高校生で?」
玲が頷いていた。
「そう、そうしたら……ね? 結婚とかがわかるんじゃないかな、と思いまして」
「なるほど……」
やってみれば良いかもしれない。
「じゃあ、一旦外に出るから。ドアを開けたらスタートにするか」
「うん、わかった。じゃあ、いってらっしゃい。……アナタ」
「おぉ……」
急にアナタって言われると動揺しまう。
外に出て、空気を吸い込む。
「……入るか」
そしてまたドアを開けて中に入る。
「おじゃまします」
制服の上に再びエプロンを付けて、玲が玄関の方に出迎えてきた。
「お、お帰りなさい。海斗」
玲が恥ずかしそうになりながら、ニッコリとしている。
「あぁ……えっと。ただいま、です」
おままごとってわかってはいるけど、これが結婚したら言ってもらえるんだって思ってしまうと、心臓の爆速音が物凄く。ライブ会場に居るかのような音が反響している。
「あ、えっと、ご飯はなしにする?」
あぁ……さっき食べちゃったばかりだもんな。
「そうだな。空の皿とかで食べている真似にするか?」
玲が頷く。
「うん、そうだね。そうしようか……。えっと、ご飯出来てるよ」
「り、了解……」
靴を脱ぎ、再びリビングに移動した。
「あっ! そういえばプリン買ってたんだ。海斗、プリン食べる」
「あぁ、食べる。食べる」
「了解、ちょっと待ってね」
買い物袋からプリンを取り出し、テーブルに置いた。
「お待たせしました。お客様、こちらが今夜の晩御飯でございます」
「それでは頂こう」
玲もテーブルに座り。フィルムを剥がしていく。
「それでお仕事の方はどうだったの? ア、アナタ」
「おぉ! えっと、いつも通りだったよ」
「あ、そうなんだ。お疲れ様」
「うん、ありがとう」
「んんっ……」
「……………えっと」
黙々と食べるが、次はどんな話題を振ったらいいのか、頭の中が真っ白になってしまってる。
「……なんかぎこちないね」
「そうだな。どう話していいのか分からないな……」
テレビの方を見ると、女優さんがウェディングドレスを着ていて、入場していた。
「海斗もウェディングを着れば、会話もトントンって進めたかもしれないね」
「なんでだよ!」
そして玲の悪い顔が発動した。
「多分、そのまま生活してもバレないって」
「いや、いや! バレるだろって!」
玲が腹を抱えて押さえながら笑っている。
「大丈夫だよ。私が貰ってあげるから、
「なんで俺が
「あはは! でも、私が男の子だとしても、海斗とこうして恋人になってたと思うよ」
「……ありがとな。そう、言ってくれて」
「えへへ」
そういって玲は笑顔で微笑んでいた。
あ……。やっぱり、この笑顔が好きだな俺は……。
「なあ玲」
「ん、どうしたの海斗。もしかして女装したくなった?」
「俺と結婚をしてください」
「……え?」
姫が目をパチパチとしていた。
「え? えぇぇぇぇ!?」
玲があたふたしていて、顔から煙が凄い出ている。
「え、本当に!?」
「あぁ……その、高校を卒業後になってしまいますが。俺と結婚してください」
俺は精一杯の気持ちで頭を下げ、手を差し出す。
「その……よ、よろしくお願い、します……」
手をグッと握ってきて、玲の体温が今まで以上に伝わってきた。
こんな幼馴染だけど選んでくれたことが、物凄く嬉しかった。
「ありがとうな玲。必ず幸せにするから」
「……はい」
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