そして受験発表……

 そして次の日。梓の受験発表ついに訪れた。

 玲と梓と俺で学校に一緒に向かった。

 そんな梓だけど自分の両肩をギュッと抱きしめてブルブルと震えている。

「あぁ……緊張するよ……」

「大丈夫、梓?」

 玲は梓を心配しながら背中をさすっていた。

「うん……やっぱり不安だよ……」

「お茶とか買ってきて来ようか? 温かいの飲んだら落ち着くかもしれないし」

「……うん、お兄ちゃん。その、お願いしてもいい?」

「了解」

 近くに自動販売機に寄って三人分のお茶を買って梓と玲に渡す。

「はい。二人とも」

「ありがとう海斗」

「……ありがとう」

 梓はふたを一気に開けて飲み干してしまった。

「――ぷはぁ! まだ不安だよ……」

「じゃあ、あれだ梓。手のひらに人って書いて飲み込むおまじないをしてみたらどうだ?」

「うん……やってみる」

 手のひらに何度も人って文字を書いていてそれをパクッとした。

「どうだ落ち着いたか?」

「……多分。ねぇお姉ちゃん達って受験発表の時どんな風に気持ちを落ち着かせての?」

「私達? どうだったけ海斗?」

「あー。今の梓と同じようにお互いがパニックになってたよ」

「そうなの?」

「玲が「受験番号置いてきた!」 って大騒ぎしてたしてたけど。実際にはポケットに持っていたんだよな」

「流石はお姉ちゃん。少し抜けてるところあるね」

 それを聞いて玲の顔が真っ赤になっていった。

「なんで私の話しになってるの!? 海斗だって合格発表の当日を見るまで緊張しすぎてロボットみたいになってたじゃない」

「そうだっけ?」

「そうだよ。それで受験の当選番号を逆さまに持っていたから「受かってない! どうしよう!」って言って抱きつかれたときは驚いたけど」

「あぁ……」

 そういえば99番っていう受験番号を逆さまにもっていたから66番と勘違いしてしまっていたな……。

「そうゆう時もありましたね……」

 すると梓が笑っていた。

「あはは! 二人の話を聞いていたらなんだか安心出来た……」

「まあ、梓の場合は勉強も真面目にやっていたから大丈夫だな」

「そうだね。梓はやる時はやるから」

「ちょっとお姉ちゃんそれ酷くない!」

 梓はプスっと顔を膨らませていた。

「でも、しっかりしてるのは本当だから気楽に。ね?」

「……ありがとう。お姉ちゃん」

 学校に着くと色々な制服を着てる生徒達で溢れていてボードにはさっそく合格発表が貼り出されていた。

「あ、あるかな……」

「梓の番号っていくつだ?」

「えっと……207だよ」

 207、207。俺は大体120番とかかれた数字を見つけてそこから指で追っていく。

「……」

 番号が沢山ありすぎて見つからない。

 えっと今が……。

「––––あった」

 梓の指をさしていた。

 俺も急いで見つけると207番。梓の数字が書かれている。

「おぉ! 本当だ良かったな梓」

 梓の方を見ると頬から一粒の涙が流れていて、どんどん集まると地面に落ちていった。

「……うぅ」

 そして玲の方に顔をうずめさせて鼻声が聞こえてくる。

「うぅ……やった、やったよ。合格出来たお姉ちゃん……」

「うん。やったね梓」

 玲は頷きながら梓の背中をトントンと優しく叩いていた。

「うぅ……嬉しい……嬉しいよ」

 そして梓は顔をこするって頬を赤くなってこっちに来て手を握ってきた。

「やった……。やったよお兄ちゃん」

「あぁ、凄いよ。よく頑張った」

 そう言って俺は梓の肩を叩いた。

「ありがとう……。じゃあ、説明受けてくるね。お姉ちゃん、またね」

 手を振っていて校舎に入っていく。

「うぅ……」

 梓の姿が見えなくなった瞬間。玲がこっちに来て泣き崩れてきた。

「良かった……。あの子が合格出来て本当に良かったよ海斗……」

「そうだな。俺も嬉しいよ」

 受験という盛大な苦労が実って本当に良かった……。

「じゃあ。梓がくるまで待ってるか」

「うん……」

 二人してベンチに腰掛けて座った。

「……ありがとね海斗。梓の勉強見てくれて」

「なんだよ急に改まって」

「こんな風に感謝の言葉を送りたいの。ありがとうね海斗」

 そう彼女は微笑んで言っていた。

「……玲って本当に梓のこと好きだよな」

 妹が泣いていたら、そばで優しくして。妹が笑っていたら一緒に笑う。それが玲なんだよな……。

 すると玲が首を傾げていた。

「梓も大事だけど。もちろん海斗の事は一番カッコイイ彼氏だよ……」

 そう言って玲は俺の方に寄りかかってきた。

 そのまま時間が過ぎていき。梓が通知を持ってこっちに来ていた。

「おやおや、これはこれは……」

 こっちの方を見るとニヤついていた。

 普通に楽しんでるな梓め……。

「寿司食いにいくぞ」

「え、ホント!」

 泣いていた頬がまだ付いていたが梓の目を輝かせている。

「ホントだよ梓。受験頑張ったから食べに行こうって海斗と話してたから。これから食べに行く?」

 梓が頷いていた。

「行く!」

「じゃあ食べに行こう」

 回転寿司に入り腹がはいりきれないほど三人そろって食べ尽くした。

「あぁ……お腹いっぱい……」

 お腹を摩りながら駅の方にいき梓が電車に乗ろうとして見送る最中だった。

「梓。泊まっていったらどう?」

 玲の提案に梓は首を振っていた。

「今日は帰るよ。お母さんとお父さんにその場で連絡するって決めていたから。ありがとねお姉ちゃん」

「そう……」

「うん」

 梓は頷き電車に乗り込もうとしたがUターンしてこっちに近づいてきた。 

「来年からよろしくね。お兄ちゃん先輩」

「お兄ちゃん先輩ってなんだよ」

 言い方が忙しすぎるだろ。

「お兄ちゃんで先輩。そのまんまだよ、じゃあね。お姉ちゃん、お兄ちゃん」

 俺と玲にハイタッチして梓は電車に乗り扉がしまった。

「……来年から後輩か」

「ねぇ」

 そう玲は満足そうな笑顔をしていて。梓に乗っていた電車を二人して見送っていた。

  


 


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