受験発表前の妹
梓の受験が終わり二週間が経とうとしていた。
ホームルームを終えて玲がこっちに来た。
「海斗。帰ろう」
「はいよ。ちょっと待ってコート持ってくるから」
「了解」
俺は自分のロッカーから鞄とコートを持って玲のところに向かった。
「お待たせ、じゃあ帰るか」
「うん」
二人して下校した。
「そういえば梓の受験発表っていつだっけ?」
「わからないけど多分もうすぐだと思うよ」
「受かっているといいな……」
「うん……。もし、落ちてしまったら美味しいのをごちそうしてあげたいな。試験前の勉強でも一生懸命頑張っていたから」
そうだな苦手な数学も苦戦しながら本番に挑んでいたから。その頑張りを応援してあげたい。
「その時は俺もなにか手伝うよ」
玲が頷いた。
「ありがとう。今日は晩御飯は食べにくる?」
「お邪魔してもいいか?」
「うん、いいよ。晩御飯の買い出しに付き合って貰っても大丈夫?」
「おう、大丈夫だ」
スーパーに寄って二人の案でトンカツの材料を買って玲のアパートに向かった。
アパートに向かう途中で梓が体育座りしていた。
「うぅ……寒い」
「え、梓どうしたの? こんな所で」
「あ、お姉ちゃん……」
寒そうに肩がガタガタ震えていた。
「中に入って」
俺は玲が持っていた買い物袋と梓の鞄を持った。
「荷物持つよ」
「ありがとう」
梓を部屋に入れて温かい飲み物を渡し一口飲んで説明してくれた。
「午後の3時からずっと待っていた!?」
「うん。明日の土曜日が発表だから泊まらせてもらおうと待っていたんだけど段々と寒くって……」
玲がため息を吐いていた。
「連絡ぐらいすればいいのに……」
「あはは、ごめんね」
ついに試験の発表されるんだな……。
なんだか自分事みたいな感じがしてしまう。一生懸命頑張ったのは俺も知っている。
「いや…でも、ごう――」
今、変な事を言ってしまい明日の発表で落ちてしまったらと考えてしまうと思うと何を喋っていいのやら……。
「え? なんでお兄ちゃん黙ったの?」
「いや……まあ、な」
「……」
玲も俺の表情を見ると悟って黙ってしまった。
「大丈夫だよ。仮に落ちちゃっても次の候補もあるんだし。大丈夫、大丈夫」
梓は「あはは」と何事もないかに笑っているが……。
「多分合格しているよ」
「そうだね……」
「あぁ……」
するとお風呂が沸いた音が鳴り出した。
「あ、ほら梓。体冷めちゃってるでしょ。お風呂入って温まってきて。夕飯の支度もしておくから」
「うん。ありがとう」
玲はパジャマを梓に渡して風呂場に向かった。
「……大変だな。受験の妹が居るのって」
「そうだね。明日が発表て聞いた時は驚いちゃったけど。その受験のことはなるべく話題を出さないようにって思って話すのも大変ね」
「だな……。まあ、受かっても落ちちゃっても一生懸命頑張ったということで寿司とか連れてってあげるのはどうか? 回る方だけど」
玲が頷いてくれた。
「それは賛成。ご褒美ってことで連れてってあげたいね。……じゃあ夕飯の支度するから」
「ありがとな。作ってくれて」
玲は立ち上がりキッチンに向かった。
風呂場から梓が出てきた。
「ふぅ……」
「梓、ご飯出来るから座って待ってて」
「はーい」
梓は座りスマホとかイジっているとテーブルの上に揚げたて熱々の湯気がモクモクとしているトンカツが目の前に出てきた。。
「へい大将お待ち」
そう言って玲は寿司を握る真似をしていた。
「店長、俺が頼んだのは寿司なんですが?」
「あれあれ? おかしいな? まあ、味は美味しいですぜ旦那。お嬢さんも食べてみて」
梓は手を口の前に持ってきて漫画とかで見るお嬢様になっていた。
「あら、世界の味を食べ尽くしたって知っててですの? お姉さま」
「それはどうかしら梓」
「なんですって!? じゃあいただこう」
そんなしょうもないコントをやって三人同時に手を合わせる。
「いただきます」
サクッていう歯ごたえが聞こえ美味いトンカツを食べれるのは流石玲だなって思った。
「あーやっぱりお姉ちゃんの料理美味しい」
「よかった」
玲がニッコリと笑っていてこう笑顔でいると本当に姉妹だなと思えてくる。
食べ終えて俺は自分の鞄を持ち立ち上がる。
「それじゃあ俺は帰るから」
「あ、お兄ちゃん」
「ん?」
梓に呼びかけられて振り向く。
「明日、受験の発表を一緒に見てくれない? 一人だとその……合格出来ているか不安で……」
本人は大丈夫って言っていたがやっぱり不安だったんだな……。
「もちろん」
梓の頭をポンポンと優しく撫でた。
「……ありがとう」
俺は手を振り自分のアパートに向かって歩いて行く。
「合格してるといいな……」
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