雨と水たまり

 ホームルームが終わり玲がこっちに来ていて話しかけてきた。

「雨降ってきたね」

「だな……」

 朝は晴れていたのに午後になって急に雨が降っていた。

 玲が困った表情をしている。

「こっちも傘持ってきてないよ」

 鞄を漁ると折り畳み傘が手元にあった。

 確かこの傘って面積が小さいんだよな。

 すると玲が抱きついてきた。

「入れて! 相合傘なら、なんとか行けるかも!」

「この傘じゃ2人ともずぶ濡れになるって。玲に傘を渡すから俺は濡れて帰るし」

 けど玲は首を横に振っていた。

「嫌だ! 相合傘がいいの」

「わかったよ」

 傘立てに海斗の傘があった。

「あ、俺の傘」

 この前雨が降っていたとき持ってきていた傘が誰かに取られてしまい濡れて帰ったことがあった。

「色々と忘れてますね海斗様」

「まあ、人間だからしょうがない。で、傘をどうぞ玲お嬢様」

 折り畳みの方を玲に渡した。

「ありがとう執事」

 玲は傘を受かって帰った。


 道には水たまりがあり。避けながら歩いていた。

「ねぇ海斗。小学生の時、こうゆう水たまりを見ると遊んだよね」

「あ〜懐かしい。掛け合いっことか。溜まったはじとはじの間をどれだけ遊べるか競争したな」

「そうそう。それでお互い服をビシャビシャにしたのをお母さんに怒られたね」

「お風呂で一緒に入ってのぼせたからそれでまた怒られたよな」

「そうそう。面白かったね」

 玲の足が止まった。

「じゃあやろうか?」

 足元には水たまりがあった。

 なぜとは聞かない……玲が遊ぶき満々だからだ。

「や、やめろよ……」

 玲は顔を膨らませている。

「えぃ!」

 足を蹴り上げ水を引っ掛けてきた。

「や、やりやがったな!」

「えへへ。追いかけてみたら?」

 ダッシュしていき水たまりをポンと飛んでいる。

「ほら、そんなことしてると転ぶぞ」

 急いで玲のあとを追いかける。

「平気、へい–––––」

 大きい水たまりに入った瞬間に勢いよく滑った。


 バシャン!! 


 お尻から落ちて水飛沫がこっちまで飛んできた。

 やっちまったな……。

 玲のところに向かい顔を覗きこむ。

「大丈夫か?」

「うぅ……パンツまでぐちょぐちょ……」

「全く……。ほら早く帰るぞ。また風邪引いたら困るし」

 玲の方に手を差し伸べた。

「うぅぅ……」

 俺は玲の手を掴んだ。

「ありがとう……」

 玲の家まで出来るだけ濡らさないようにアパートに向かった。

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