彼女の手料理

 海斗は何故か玲の部屋に入っていた。

 あれ? なんで俺、玲の部屋に居る?

 状況を整理しよう……。


 玲と手を握ったあと、いきなり「部屋で食べに来ない?」と言われた。

「いや、今夜は遅いから大丈夫」

 玲は顔を覗かせた。

「なに今更、どうせ今日もカップ麺とかで栄養偏ってるのかないでしょ?」

「うぐっ!」

 図星を突かれて反論もない。

「晩ご飯作るから。食べに来て欲しいな。どうせ作っても余るだけだし。たまに来ているから良いと思うけど」

 確かに勉強会とかご飯をご馳走になったことはある。それは幼馴染だからという安心感があるからだった。

 今は心臓がバクバクと鳴り出して収まらない。

「それで来ますかね? 海斗刑事」

 いつの間にか刑事にされていた。

 玲が作れる料理は美味いは知っている残り物が余るならいこうかな。

 自分に甘い言い訳を並べる。

「行くであります。玲刑事殿」

 海斗は敬礼をする。

「ふむ、離れずについてくるのだ」

「ラジャー」

 いつも通りのやり取りで玲の部屋に向かっていった。

 部屋に着き玲が鍵を開けた。

「お邪魔します」

 部屋に入るといつも置いてあるデカイ熊のぬいぐるみがベットにあるからいつもの玲の部屋だった。

「すぐに作るから待っててね」

「はい……」

 玲はエプロンを着て料理を開始した。

 そして今に戻るわけだが心臓が止まらない。

 エプロンの玲はいつも見ていたはずなのに物凄くドキドキする。

 すると向こうの方でジューと何か揚げる音が聞こえた。

 素早く皿に盛りつけるとテーブルに持ってきた。

「へい大将お待ち」

 出されたのはトンカツだった。

「店長、俺は寿司頼んだはずですが?」

「おやおや? これは失敬でも味は美味いですぜ」

「それじゃあ。いただきます」

 海斗は箸を持ち一口噛むと肉汁が溢れ出て衣がサクサクとして美味い。いつもの玲の味だ。

「うん。流石美味い」

「やったね」

 玲はガッツポーズをしていた。

 海斗はあっという間に食べ終えてしまった。

「……美味かった」

「それはよか、よか」

 もう帰る時間となり海斗は立ち上がった。

「それじゃあまたな」

「うん。またね」

 玲に手を振り海斗は自分の家に帰っていった。

 玲から手料理を食べれて嬉しい。

「あれ?」

 海斗は立ち止まった。

 いつも通りだ……。

 ノリで喋ってご飯をご馳走になる。いつもと変わらなかった。

 それじゃあ恋人になれたけど、どう接点をすればいいんだ。

「幼馴染だけど付き合ってどうすればいいの?」

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