カフカ独占インタヴュー

ネコ エレクトゥス

第1話

筆者(以下Q):本日はどうもわざわざお越しくださってありがとうございます。ただ正直言ってあなたはイモムシになってしまわれたのでコンタクトをとれるかどうか大変不安でした。


カフカ(以下K):僕が虫に変身したことがあったということは、こうして君と話をすることもあるってことさ。


Q:こんなことを聞くのは大変失礼なのですが、虫に変身したときはどんな感想をお持ちでしたか。


K:最初は確かに違和感があった。でも慣れたよ(笑)。


Q:さて、本題に入りましょう。あなたは最近の世界、また日本という国で起こっていることについて何かご存じでしたか。


K:僕というのは知りたくないことをまず最初に知っちゃうんだ(笑)。だからだいたい何が起こっているのかは知っている。それと日本という国はチェコにも文化が入ってきてたのでちょっと関心があったんだ。


Q:率直に言ってどんな感想をお持ちになりましたか。


K:また「万里の長城」を築き始めたな、と。


Q:それはどういうことでしょう。詳しく説明願いますか。


K:どこかはるか離れた地で皇帝が伝令を出した。それに従って人々が西方の地まで出かけて行って長城を築くのに従事している。つまり訳のわからないことに振り回されて人々は日々生活している、ということさ。


Q:それは人間としては悲しいことですね。


K:だがそれも生きるということの一部なので受け入れなければならない。


Q:避けることはできないのでしょうか。


K:できない。ただできるのは適当に付き合うってことだけかな。


Q:このこととも関連のあることですが、あなたはかつて短編小説で学者のことを「回転するコマを見るとそれを掴みたがる。そうすることで世界を把握できると思っている」と皮肉っていましたが、その考えは今でも変わりありませんか。


K:全く変わらない。ただ変わったのは回転するコマのスピードが前より格段に早くなったってことだけかな(笑)。まあ、一番小さなものから世界を再構成したがる近視的な性格というのは学者の宿命的な性質だね。


Q:それでは今後世界はどのように変化し、我々はどのように生きていくべきかについて展望をお聞かせくださいますか。


K:うん、それはね、ンッ?ちょっと待って。何かおかしい。体に違和感がある。前にも感じたことのある何かだ。また虫に変わり始めた!手が縮み始めた!君とこんな話をしていたからだ。また口もきけなくなる。それじゃあ、さよなら!虫を見たら僕のことを思い出してくれ!

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