第233話 特務機関
指令部ビルは上へ下への大騒ぎ。
水棲セーサランがよっぽどのものらしい。おれもセーサランの情報を集めていたほうがいいかもしれんな。
「申し訳ありません。ここでお待ちください」
応接室的なところに通され、世話役かと思う青鬼の女性士官と待つことになった。
「なにか飲み物をご用意しましょうか?」
「いや、ではコーヒーを。ここは禁煙ですか?」
「畏まりました。禁煙ではありませんのでご自由にごゆるりとお過ごしください」
と言うのでキセルを出してタバコを吸わしてもらった。
「コーヒーです」
「ありがとうございます」
コーヒーと一緒に出された灰皿の上にキセルを置き、出されたコーヒーをいただいた。
一時間ほどゆっくりしていたら青い肌をした男が入ってきた。
「失礼します。ダーダと申します。シーカイナーズで情報特務官少将を与えられております」
つまり情報組のトップってところか。
カイナーズが組織されて何年かはわからないが、オレと同じ転生者なら少なくとも三十年は経っているはず。しっかりとした組織となるには充分な時間だろうよ……。
圧倒的組織差。いや、組織力か? とても傭兵上がりのおれでは対抗し切れない差だぜ。
「タカオサです」
知ってはいるだろうが、挨拶は社会人の礼儀。席から立ち上がって軽く一礼した。
「わざわざお越しいただいて申し訳ありません。セーサランの確認に時間がかかっておりまして、材料の引き渡しが難しくなりました。カイナーズホームに話を通しましたので、そちらで受け取っていただけませんでしょうか?」
そのために情報特務官がきたってことはないだろう。先ほど言ったセーサランを感知する手段を求めてだろうよ。
「わかりました。カイナーズホームで受け取りましょう」
「ありがとうございます。それと、生体反応装置の話をお聞かせいただけませんでしょうか? 実は、こちらにセーサランを感知する手段があまりないのです」
元の世界の技術なら熱反応かな?
「では、マーメイドスーツを改造してバトルスーツにします。熱、動体でセンサーを搭載します。本当ならセーサランを調べられたらより詳しい生体反応を捕らえられるんですがね」
万能さんの力なら個体情報を得られるはず。そうすればより早く発見できるだろうよ。
「それは、死体でも可能でしょうか?」
「その死体からどこまで調べられるかわかりませんが、まあ、ないよりはマシかと思います」
万能さんは全能ではない。できないものはできないことだってあるからな。
「少し、お時間をいただいてよろしいでしょうか? わたしの独断では決められませんので」
「プリッシュと約束しましたからな。そちらが望むものを望むだけ渡すと。もちろん、その代価はいただきますが」
材料って意味ね。魔力は無限でも出力は家庭用蛇口。外にあるものを利用しないと要求に応えられないんだよ。
「はい。すぐに話を纏めてきます。もうしばらくお待ちください」
一礼してダーダさんが部屋から出ていった。
「ミルテ。すまないが今日は帰れないかもしれない。また厄介事が起きた」
これは帰れないと判断してミルテに報告を入れた。
「わかりました。無理なさらないでくださいね」
「ああ。無理はしないよ。屋敷を頼む」
「はい。お任せください」
うちの嫁は本当に頼もしい限りだ。
ミルテとの通信を切り、新しい薬丸を交換してゆっくり吸っていたらダーダさんと高官とわかる服を着た男たちがやってきた。
「お待たせして申し訳ありません」
「構いませんよ。待つのも仕事ですから」
なんの仕事かは知らんけどな。
「ありがとうございます。こちらはセーサラン特務機関の者たちがタカオサ様をご案内させていただきます」
「初めまして。セーサラン特務機関員のガイダス大佐です。お見知り置きを」
部署が違うから代わると言うことか。組織が大きくなると大変だな。まあ、感じからして壁は薄そうだがな。
「タカオサです。こちらこそお見知り置きください」
「さっそくですが、セーサラン研究所へ参りたいと思います。よろしいでしょうか?」
「構いません。家族にはしばらく帰れないとことを伝えましたので」
「ご配慮、ありがとうございます。では、こちらへ」
と、司令部ビルの屋上へと上がった。
「セーサラン研究所は別の大陸、ヤオヨロズ国ミリーダ属州にありますのでシュンパネで移動します」
別の大陸とは。ヤオヨロズ国、どんだけだよ。
「お任せします」
この世界の地理を知らないのだからお任せするしかない。
「はい。では、セーサラン研究所へ──」
ハァ~。今日は移動してばっかりだぜ。
光の家族 膨大な魔力で世を救う! タカハシあん @antakahasi
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