第232話 廃棄艦艇

 魔大陸に現れた──が、なにか建物の屋上、ヘリポートの上だった。


「司令部ビルです」


 普通にビルとか出てくるカイナーズ。パラレルワールドに迷い込んだ気分である。いやまあ、パラレルワールドとなにが違うかは説明できんがよ。


 案内されてビル内へと入り、エレベーターで地下一階へと降りた。


 どうやら地下駐車場のようで、黒塗りの車が用意されていた。VIP扱いだな。いや、カイナーズからしたら要注意人物だな。


 車に乗り込み発車。地上に出てしばらく走ると、港──いや、軍港に着いた。


「廃棄された艦を置いていく場所です」


 案内役の青鬼さんが説明してくれた。


「材料になるでしょうか?」


「問題ありません。材料は材料ですから」


 万能さんにかかれば廃棄物でも資源。リサイクルである。


 なにかに怪獣でも載せたのか、くの字になっている空母の前で黒塗りの車は止まった。


 車から降りてくの字になっている空母を眺める。


「港にあるものは自由にしてよいので?」


「はい。ご自由にお使いください。足りない場合は廃棄した戦車もありますので」


 どこの戦場だよ。もしかして、この世界は大戦があちらこちらで起きてんのか?


「しかし、結構な数ですな」


「はい。不明戦艦や水棲型セーサランと戦いまして、五十もの艦艇がこうなりました」


「……それはまた、死者も多かったでしょうね」


「カイナ様の加護で死者は百名もいません。重傷者もベー様の薬で全回復しております」


 この廃棄された艦艇で百名もいないとか、いったいどんな加護でどんな薬だよ。ってまあ、おれも万能さんから生み出されたスーツを着させているから死者は出してないんだがな。


「では、始めます。あ、何日かかかるので通う形でやらせてもらいます」


 万能さんも解体、分解、資材化して、今後のために貯蔵しておくとしよう。と言っても解体ドローンを作り出してやらせるんだがな。


 と、その前に、誰もいないかを確認しておくか。住み着かれてたら──って、生命反応がいくつかあるな。


 人、ではないな。体温が低く、軟体動物っぽいものがあちらこちらにいるぞ。


「廃棄艦の内部は見てますか?」


「いえ、廃棄した艦なので見てはおりません。なにかありましたか?」


「生命反応が最低でも四十。グラーニーとは違う、軟体系の生命反応がありますね」


「まさか、ミローズ!?」


 ミローズ? またファンタジー生物か?


 疑問に思っていると、青鬼さんが車に飛び込み、緊急事態を叫んでいた。


「タカオサ様。申し訳ありますん、ここを空爆しますので退避してください」


 く、空爆!? や、やることが米の国みたいだな!


「わ、わかりました」


 やると言うならおれに異論はない。車に乗り込んだ。


 アクセル全開で退避し、三キロほど離れると、Aー10戦闘機が四機、飛び越えていった。


「ミローズは水棲型セーサランです。成長型は全長二十メートルはあり、五つの触手を持っています。エネルギー攻撃はできませんが、触手についた爪は艦艇すら斬り裂きます」


 あーそう言えば、なにかに斬り裂かれた痕があったっけな。深く考えてなかったから気にもしなかったよ。


 と、背後から光が襲ってきて、次に衝撃波が襲ってきた。


「す、凄まじい威力ですね」 


 まさか核とかじゃないよな?


「EG99と呼ばれる光子爆弾です」


 光子爆弾? え? SFな作品に出てくるあの光子か?


 いや、理系ではないので光子がなんなのか知らんけど、三、いや、四キロも離れてるのにこの衝撃波で凄まじいものとは理解できたよ。


「まあ、地上用なので威力は低くしておりますが」


 あんな威力のものを地上で使うことがあったんだ。この世界、大丈夫か? なんか不安になってきたんだけど……。


「二発目、きます」


「念入りですね?」


 あの威力で生き残れる生き物なんていないだろう?


「セーサランはしぶとい生命体です。現に生き残りがいました。しっかりと倒したのに」


 悔しそうに言う青鬼さん。どうやら歴戦の軍人のようだ。


「タカオサ様。セーサランを探知できるものを用意できますでしょうか?」


「セーサランがどんな生き物かは知りませんが、生体反応装置は用意できますよ」


 生命体ならなんらかの反応を示している。今回は動体反応でわかった感じだ。


「基地司令のところへご案内します」


 つまり、基地司令と話し合ってくださいってことね。


「わかりました」


「ありがとうございます。司令部ビルへと向かえ」


 来たところにまた戻るとか、おれの人生いったり来たりだな……。

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