第194話 仕事再開

 仔ッコどもと戯れる。


 なんだかこの世界に生まれて穏やかな時間を過ごしている気するな……。


「元気なヤツらだ」


 朝起きてから止まることない仔ッコども。自然と頬が緩んでしまう。


 このまま仔ッコどもと戯れていたいが、そうも言ってられない。やることはいっぱいあるのだからな。


「また遊んでやるからな。いい子にしてろよ」


 ヒャンヒャンと纏わりつく仔ッコどもをミルテたちに渡し、カナハを連れて屋敷を出る。


 光月こうづきに乗ろうとしたら、上空になにかいるのを万能さんが捉えた。


「ドローンかな?」


「結構いるね」


 カナハも万能さんが捉えたものを見て、おれの呟きに返した。


「容赦がないな、カイナーズは」


 何十機も飛ぶドローンがカイナーズのとは断言できないが、まあ、この世界にドローンを飛ばせるヤツなんて限られている。十中八九、カイナーズと見ていいだろう。もし、違うと言うならおれは泣くわ。


「落とす?」


「気にするな。屋敷を建てたときから対策はしてあるからな」


 あちらが現代兵器を使っているなら誤魔化しや妨害は簡単なもの。こちらは無限の魔力でウソを見せてるわ。


 光月こうづきに乗り込み発進する。


 突如として現れた光月こうづきに二機のドローンが急旋回するのが見えたが、構わず三賀さんが町へと向かった。


「朝日が飛んでるな」


 四機が一団となって飛行場へと向かっていた。


 毎日一機と、二十四時間フル稼働とか、この世界に二十四時間勤務って言葉を生んだのはゼルフィング商会に決定だな。


 ほぼ二十四時間起きてられるおれでもゼルフィング商会には入りたくない。絶対、人生を無駄にするわ。


 飛行場の上空に来ると、三十機が並んでいた。


「……父さん。あの人もいるね……」


 たぶん、バルキリアアクティーを見て言ってるのだろう。


 なにしに来たのか気になるところだが、今さら親と名乗る気はない。その資格もないしな。


 求められてから──なのは無責任なのはわかっている。だが、こちらからあの娘の心に入る気はない。あの娘なりに父と呼べる者がいるかもしれないからだ。


「父さん。あの人になったりする飛行機みたいなの作れる?」


「まあ、作ろうと思えば作れるが、人型になる利点などないぞ。操縦が複雑になるからな」


 人型ロボットは男のロマン。実用性を捨て、不自由でもいいからと作ったものだからな」


 ロボットを作るくらいなら巨大化したほうがマシだわ。


 ……おれは機動な戦士より三分でもいいから巨大化したり、バトルスーツに変身する派だ……。


「乗りたいのか?」


 おれは乗りたいと思わないが、カナハが乗りたい気持ちを無視するほど狭量ではない。どちらかと言えばなんでも代え与えちゃうダメな父親です。


「うん、乗りたい。あれよりも凄いのに」


 さらに要求して来るカナハ。その向上心(?)やよし。おれが叶えてやろう。ハルナの力を借りて、な。


「ハルナ。いいか?」


 なにか本を読んでいたハルナに意識を繋いだ。


「どうしたの?」


「カナハがバルキリアアクティーより凄いものに乗りたいと言ってるんだが、なにかないか?」


 まあ、前世のアニメにゃイカレたのがいっぱいあるがよ。


「あるけど、せっかくだからオリジナルを作ってみるわ。魔力、膨大になるから地下で作るね。カイナーズにバレたら問題だろうしさ」


 膨大な魔力があるってことね。


「わかった。凄いのを頼む」


「考えはあるから明日までには作るわ」


 万能さんと膨大な魔力さんに感謝です。


 直後、膨大な魔力が流れるのを感じた。


 ……一秒間に万単位で消費するとか、マジで凄いのができそうだわ……。


 店の上空まで来たが、今日は港造りだ。いつまでも山梔子くちなしを月島つきしまに置いておくにはいかんからな。


「荒れてるな」


 町の一部だが、人手がなく開墾を後回しにしたと聞いている。


「ここに港を造るの?」


「ああ。まずは山梔子くちなし紅桜べにさくらを収納できる港をな」


 世界的な港を目指しているわけじゃない。あくまでも望月家専用港だ。まあ、借りたいと言うなら貸すけどな。


 海に降り、仮の桟橋を作る。


「カナハ。とりあえず雑木を刈って視界を作ってくれ。方法は任せる。おれは飯場や重機を作るんでよ」


「火を使ってもいい?」


「使ってもいいが、風の方向を考えてやれよ。町に火や煙がいくと非難されるからな」


 町の者を敵に回したくないしな、配慮はしておいたほうがいいだろうよ。


「わかった」


 と、手のひらから炎を出して雑木を燃やした。


 ……ほどほどに頼むぞ、カナハよ……。

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