第188話 急変
昼飯を食い、充分休んでから狩りを再開した。
「結構いるものなんだ。なに食べてんだろう?」
生命感知でなにを狩ろうかと悩んでいたカナハが呟いた。うん。それはおれも知りたいところだな。
山の奥に棲む生き物は大抵巨大なものが多い。それは蟲もだ。ミミズなんて大蛇くらいあるし、襲っても来る。恐ろしいもんだ。
まあ、それを炎の矢で容赦なく焼くカナハが一番恐ろしいのだが、もうちょっと自然に優しい攻撃をしなさい。後始末が大変なんだからさ……。
「父さん。あっちに大きい反応があるよ」
カナハが指差す方向に意識を向けると、魔力100000近いものがいた。
「こりゃまた大きいこと」
完全状態の翡翠ひすいくらいあるな。狛犬か?
「こっちに向かって来るね」
「敵だと思われたかな?」
自然破壊しながら進んでるしな。敵と認識されても反論できんわ。
なにやら木々をバキバキ折りながら真っ直ぐこちらに向かって来ている。熱、臭い、気配、魔力も消してるのに、なにを指標にこちらに来てんだろう?
「カナハ。まずはお前一人でやってみろ。無理なときは手を出すからよ」
魔力100000程度の魔獣なら問題はなかろうが、謎の魔獣。なにをして来るかわからん。用心だけはしておこう。
こちらへ向かって来る魔獣の側面を狙うためにカナハから離れる。
樹々が高く、雑木が生い茂るので姿は見えないが、樹々を押し倒すことからしてかなり巨大であることはわかる。
……怪獣だったりして……?
山の奥には巨大な生き物がいる、と結構な昔から伝えられている。
音を殺しながら側面につき、雑木の間から標的を見る。
……ヤバイものだった……。
「カナハ! 攻撃しろ!」
神無月かんなづきを標的に向け、連続で吸魔弾を発射した。
「キィィィィィィィィ!」
なんか黒板に爪を立てたような咆哮を上げた。
姿もヤバイが咆哮もヤバイすぎる。なんかとんでもないものに遭遇しちまったぜ!
吸魔弾は全弾当たり、魔力を吸い込むが、20000溜められる弾が全部溜まったのに、標的──謎の生命体は元気に動き、なんかビーム的なものを撃って来やがった。
緑色のビーム的なものが大地をえぐり、灼熱の大爆発を起こす。
「クソがっ! この世界はこんなデタラメなもんまでいんのかよ!」
もう人の手でどうこうできるレベルはものではない。自衛隊呼ぶレベルである。
「父さん! 攻撃が効かないよ!」
「神無月かんなづきを使え! 魔力がある生き物だ! 容赦なく撃ち込め!」
生き物なら魔力を全て奪い取れば生きてられない。物理攻撃より有効だ。
ビーム的なものを容赦なく撃って来る謎の生命体。なにか宇宙的スタイルで六足歩行。手はカマキリのような鎌。背中に羽っぽいものがある。
「クソ! 蟲なんだか獣なんだかはっきりしやがれ!」
堅そうな見た目なのに獣のように柔らかい体を持ちやがって。気持ち悪い生き物だぜ!
ビーム的なものを躱しながら吸魔弾を撃ち込む。
もう1000000は吸ってやったのに動きに乱れはない。ビーム的なものの威力も落ちてはいない。自衛隊でも勝てねーぞ、こんなもの!
「クソ! このままじゃ埒があかん!」
神無月かんなづきを仕舞い、代わりに切れ味に特化させた魔力の剣を生み出した。
「カナハ! 援護を頼む!」
万能スーツの機能を高めに高め、音速ダッシュ!
謎の生命体の脚の脚を一本斬りつける。
「キィィィィィィィィ!」
咆哮に似ているが、苦痛の悲鳴だとわかるくらい気配が警戒に変わった。
「ほぉう。痛みも恐怖もあるんだ」
謎の生命体ではあるが、痛みも恐怖もあるのなら勝てない相手ではない。そうわかったら思考も気持ちも冷静になれたぜ。
さらに脚を斬り落とし、ビーム的なものは魔力とわかったので感謝を込めていただきます。
さすがに脚を二本も斬り落とされ、魔力ビームを全て吸い取られては動きが鈍くなって来た。
「カナハ! 決めるぞ!」
マナスーツに溜め込めるよう機能追加。吸うための槍を作り出してカナハに投げ渡す。
片側の脚を斬り落として動きを止め──ようとしたら羽を広げ、体を浮かした。
羽ばたかなくても飛べるんかい!
と、突っ込みを入れる前に本物のビームが撃てる銃を作り出し、引き金を引いた。
万能さんの計測により撃ち抜けるだけの熱線が謎の生命体を貫く。
「生命力も高い生き物だ」
二発三発と撃ち込み、カナハが槍を突き刺し魔力を吸い込む。
なんか核融合みたいな炉でも体内にあるのか、とんでもない魔力がマナスーツに溜められる。
それでも容量を超えることはない。全ての魔力を吸い尽くし、謎の生命体は地に落ちた。
「……三つの能力を願ってなかったら死んでたな……」
特に万能変身能力を願ったおれ、グッジョブ。前世のおれに万歳三唱だ。
「自分の住んでるところにこんな生き物がいるとはな」
朽ちた謎の生命体を蹴り上げる。ほんと、堅い甲殻だぜ。
「父さん」
「お疲れさん。よくやった」
恐れず挑んだカナハの頭を撫でてやった。
なんてほっとしたときこそ油断してはならぬ。謎の生命体と同じ魔力を示す反応が六つ、現れた。
「……モンスター映画でよくあるパターンだな……」
だが、そんなパターンにならないのがファンタジーな世界。いや、おれの人生か。
「……バルキリアアクティー……」
人型になったり飛行機になったりする可変宇宙戦闘機が現れたのだった。
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