第168話 左軍拠点
序列発表(笑)第一部が終わっても休憩はできない。いや、やろうと思えばやれるのだが、紋付き袴では身も心も休まらない。とっとと終わらせるに限る。
「カナハ。
「わかった」
素直で助かる。あとで構ってやらんとな。
「ハルマたち、ついて来い」
そう言って湖の桟橋へと向かった。
館門の前に輸送機の桟橋を作ったが、人が増えるに連れて桟橋一本では足りなくなり、今では三本となっていた。
第一桟橋は左軍の桟橋として使い、第二は当主直属の桟橋とし、第三は右軍用としている。
その第一桟橋には、ハルマの天烏てんうと朝日型輸送機が二機が繋がれている。
ちなみに右軍のマークは三日月で色は黄色。左軍は有明の月で白にしてある。あと、望月家の家紋たる狛犬の顔もついつます。
「ハルマに右軍を任せることは言ってたし、今日、正式にハルマを右軍大将と宣言した。だが、十やそこらの子どもに戦いを求めたりはしない」
いるヤツがいたら頭が腐ってるか性根が腐ってるかのどちらかだわ。
「それはなぜかわかるな?」
「身も心も未熟だから」
きっぱりと言い切るハルマ。それを情けないと言うバカは死ね。気概がないと叱るバカも死ね。いや、おれの手で殺してやるわ。そんな害悪、この世には必要ないわ!
「そうだ。だが、それは恥じることじゃない。よほどの天才か人外でなければそれが当然だからだ」
その天才や人外がいるから世はままならないよな。
「おれが十歳のとき、頼れるものは一つ上の兄貴と仲間だけだった。身も心も未熟だってことも知らない無力な子どもだった」
力があれば、力が欲しいとばかりに足掻いていたもんだ。
「環境や出発地点は人それぞれ。嘆いても無駄だ。過去を見る前にどうすれば生きられるか考えろ。時間を無駄にする前に生きる知恵を学べ。お前たちはそれを十歳で学んだんだ、その優位を大いに活かせ」
おれは三十六で前世の記憶が蘇ったが、もう記憶がなかった時間を無駄とは思ってない。今生の三十六年があったからこそ今を生きてられるんたからな。
それに、三十六歳などまだまだ若いし、万能さんの生命維持能力で健康体になり、金桃を食べてるから寿命も延びているはず。人生百年だとしても六十年以上はあるんだ、嘆く理由にはならんさ。
「うん! わかった!」
お前も素直でよろしい。が、もうちょっと狡猾になってもいいんだからな。
……このまま素直に育つのも心配だな。しばらく様子を見て仲間に狡猾な者がいなければ人造体を潜り込ませることも考えておくか……。
親バカと罵られそうだが、子は可愛いもの。バカになってなにが悪い──と言っているようではダメだな。閉じ込めるのが愛情じゃなく強くすることが父親って愛情だろうに。
「それで、だ。左軍が正式に設立したことを祝い、左軍拠点を贈る」
「拠点? 武器庫ではなく?」
「あそこはおれ管轄として右軍左軍に配属させる者を鍛える場所とする」
まだ先の話だが、まだ人は増やすことを考えている。そうなる前に用意だけはしておくのだ。
「左軍とは言ってるが、要は傭兵団。望月傭兵団だな」
あまり語呂がよくないが、望月の名を知らしめなくちゃならないのだからしょうがない。活躍すれば二つ名もつけられるだろうしな。まあ、それで語呂のよい名がつくかはわからんけど。
「もちろん、今は形だけで、お前たちが十五歳になる頃から活躍をしてもらう。それまでは近隣の村をイズキで回り、行商のようなことをやってもらう。まあ、
「魔力販売器を置いたり作物を売ったり買ったりするんだね」
「そうだ。まずは千華村せんけむら周辺から始めるのがいいだろう。その辺は皆と話し合ってハルマが決断しろ」
それもまた訓練であり人脈作りだ。
「失敗してもいい。間違えてもいい。それこそ大ボケしたっていいんだ。そんときはおれがお前らのケツをふいてやる。だから学ぶことを恐れるな」
やはり親バカで過保護かも知れないが、失敗して縮こまるよりは百倍マシだ。多少精神が弱くてもハルマには支えてくれる仲間がいるのだ、孤高の強さなどいらんわ。
「うん! おれ、今以上に生きるのに貪欲になるよ!」
それでこそおれたちの意志を継いだ男。頼もしいぜ。
「上を見ろ」
ニヤリと笑い、上へと視線を向ける。
上空五十メートル辺りに一隻の戦艦があった。いや、話している間に作ったのだ。
「左軍の拠点であり望月傭兵団の拠点でもある空中戦艦だ。名前はハルマが考えて命名しろ」
やはり、男のロマンを求めるのなら空中戦艦は外せないだろう。時代とか歴史とかクソ食らえだわ!
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