第147話 凶星
「タカオサ様。現場に到着しました」
カナハではなくミレハから連絡が入った。
「了解。上空監視に徹しろ」
こちらも花木村が見えて来た。乗客がいるから着陸に徹しねばな。
「サネ。おれだ。今から村長の屋敷内に降りる。人を退けておいてくれ」
「了解です」
副官でもあるサネは全体を見る目や勘がいいとかで、よく後方や中間での指揮を任されるらしい。
後部ハッチを開放してから操縦席を出て兵士たちを外へと出させた。
「タカオサ様!」
と、サネが駆け寄って来た。
「ご苦労。伝令は?」
「亡くなりました」
「事情は?」
「詳細は不明ですが、うわごとから白髪の男が襲って来たようです」
打てば響くような返答。さすがアイリの副官をしていただけはある。
「わかった。副事官殿。兵士を五名選んでください」
そう言って戸惑う村長のところへ向かう。
「村長。心して聞け。これは、三賀町さんがまち町長、曽井そいサダイ様より命だ。花木村はなきむらは副事官殿の指揮下に入る。おれは補佐として雇われた。異存はないな?」
町からの命令に村は否とは言えないのだが、仕事を円滑に進めるには高圧に出ないと回らないのだ。この時代では。
「……は、はい。承りました……」
村の連中には恫喝命令してるが、この社会から見れば村長も恫喝命令を受ける立場。世の無常を感じるよ……。
「今すぐ
そう命令を出して副事官殿の元に戻る。
「副事官殿。選びましたか?」
「ああ。この五人だ」
横一列に並ぶ五人が一斉に敬礼をする。
全員三十歳前後。装備や体の作りからして特殊兵士だろう。
ちなみに特殊兵士は、主に魔物を相手にする兵士であり、常日頃野外で活動しているしているから今回選ばれたのだろうよ。
「あなたたちには
「わかりました」
バトルスーツを纏っているので男女間のいざこざは起きないだろうし、攻撃用ドローンを五機つけるので魔物が出ても問題はない。
「隊長は?」
「わたしです」
と、一番厳つい男が一歩前に出た。
特殊兵士がいることは知っていても絡むことはなかったので、どんなかは知らなかったが、体格と気配、そして魔力からして一流の傭兵にも負けてはいないだろう。
……いたんだな、こう言うの……。
「食料と水はこちらで用意して送りますのでご安心を。では、
「はっ!」
さすが副事官殿が選んだだけあって優秀だ。うちに欲しいくらいだぜ。
「副事官殿と医師は屋敷へ。残りの兵士は二名は北門へ。残りは屋敷で待機してください」
村長も──とはいかず、まだ
「村長。兵士を待たすな」
「そ、そうは言うが、こんなこと初めてで……」
まあ、小さな世界で生きてる者に緊急時や不測の事態に迅速に動けと言うほうが悪いか。日頃から人身掌握や訓練なんてしてないんだからな。
「なら、おれが決める。村長は副事官殿を屋敷に案内しろ」
村長を副事官殿のほうに押し出し、困惑する
「いろいろ文句はあるだろうが、これは町長の命だ。逆らえば首が飛ぶぞ」
脅しでもなんでもなく、マジで首が飛ぶ時代。
……まあ、傭兵は消耗品扱いだけどな……。
「あんたとあんた、そこのとそこ、そっちのとそち──」
と足腰の強いのを十名選び出し、兵士の元へといかせた。
「あと、走り番一名と人馬組から二名出して北門へ向かえ。兵士の補佐だ」
こちらはそれほど重要ではないので適当に選んで向かわせた。
もっと細かく指示したいところだが、理解できるほどの教育されてるわけでもなく、単純なことしかやらされない男たち。時代とは言え泣けてくるぜ。
屋敷へと入り、以前通された部屋に副事官殿たちがいた。
「村長。すぐではなくていいから炊き出しできるように準備をしててくれ。食料はこちらで用意する」
さすがに食料を出せとは言えない。村で補える量しかないのだから。それを無理に出せと言えば反乱を起こされかねないわ。この時代の一揆は滅びと同義だからな。
テーブルにモニターを三台設置する。
一台は町長に繋ぎ、一台はサネに。残りは
「町長殿。副事官殿。これより始めます」
さて。なにが起こってるんだ?
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