第140話 鬼畜の所業
朝食が終わると、ハルマはすぐに
「ハルマは頑張ってるな」
「仲間ができて嬉しいんでしょう。村ではできませんでしたから」
叔父からつま弾きされ、ろくに食事も与えられず、棘の落ち木を集める仕事ばかりさせられていたらしい。
「そうか。どんどん仲間を増やして欲しいものだ」
残りの久見茶を飲み干し、席を立つ。
「ハハル、頼むな」
「うん。あ、また三賀町さんがまちに籠るから。そろそろ
できる娘に感謝の敬礼。そして、お小遣いを上げよう。好きなのを買いなさい。
「……お金があればなんでも買える。欲しい物はなんでも手に入る、って信じてたあの日のあたしを殴ってやりたいわ……」
まず買えない物は万能素材で作り出せ、毎食外旨い飯が出る。しかも、質がよすぎて他に目を向けようとも思わないだろうよ。
「金で魔石は買えるぞ」
「費用対効果が釣り合わないわよ」
そう言いながらも差し出した金銭が詰まった皮袋をしっかり受け取るのはハハルだからだろう。ってか、費用対効果なんて言えるお前にびっくりだよ!
ハハルも消え、
「朝、こうしてのんびりできるってのもいいものだな」
いやまあ、起きて数時間過ぎて言うセリフではないが、この一時が穏やかで心地よい。これが豊かになったってことだろうな……。
「って、そうものんびりしてられなかった」
今日は苗字をもらう日であり、アイリたちの扱いもしなくちゃならんのだった。
「カナハ、アイリたちを武器庫に連れて来てくれ。ミルテ、後を頼む」
「はい、旦那様」
ミルテの頬にキスをして居間を出た。
地下へと通じる階段(あ、エレベーターもあります)を使って地下三階にある武器庫へと下りた。
ハルマのところにも武器庫はあるが、こちらはアイリたちのためのもので、右軍の仮本部でもある。
ざっとしか造ってないので地味な感じだが、改築は落ち着いてからだ。アイリたちの好みもあるだろうからな。
「武器も
バトルスーツが大体のことを補ってくれる。遠征とかじゃなければこれで充分だ。
それぞれ十ずつ作り、それぞれのロッカーに仕舞う。
「父さん、連れて来た」
いいタイミングでカナハたちが現れた。
「ああ。それじゃアイリたちにロッカーをやる。武器を入れておいたので好きに使え」
他にタオルなどの消耗品の説明や補充のシステムなどを教える。まあ、ハルマのところと同じだ。
「じゃあ、二人は敷地内の警備。二人は周辺警戒。二人はカナハと訓練。一人は店の用心棒だ。人選は決めてあるか?」
人数が人数なので仮の配置。最低でも二十人は揃わないと回してはいけないだろうから、それまでは臨機応変だ。
「店にはハヤカがいくよ」
とは中堅な感じの小柄の女で、斥候とかしてそうな身の軽さをしていた。
「ハヤカは斥候なのか?」
「いや、タカオサ様と同じく遊撃だな。器用で魔術も使える」
「へー。魔術をか。さすが
各地から娘を買ってるからか、いろんなタイプの女がいて、いろんな仕事を受けていたものだ。
「今はこれしかいないがな」
「なに、すぐに増えるさ。
世が裕福にならない限り娘は売られ続ける。なら、それまでおれが買わしてもらうよ。
「それはともかく、町の護衛にはこの装備で頼む」
ハヤカのバトルスーツをSP風のスーツ姿にし、ネイルガンを上着の下に装備させる。後、特別製のサングラスも。
……なぜSP風かと問われたら完全な趣味ですと答えます……。
「目立つのではないか?」
「威圧するよりはマシさ」
ハハルがなんの店をするかは知らないが、たぶん、女を相手にする店だろう。なら、威圧する姿はダメだ。まあ、ハハルがダメと言うなら止めるけどよ。
「カナハとの訓練は足の一本でも奪うような訓練をしてくれ。カナハは奪われないようにしろ」
「鬼か!」
「その鬼のお陰でおれはこうして生きている。現役傭兵がいかなるものか教えてやってくれ」
カナハのマギスーツの機能をすべてカット。本当に不味いときだけ発動するようにする。
「血反吐を毎日三回。十日も続けたら立派な傭兵だ」
「いや、途中で死ぬわ!
だから傾くんだよ。鬼畜の所業で強くなれ。つーか、あの人の訓練は鬼畜と呼ぶのも生優しいわ! 一本間違えば死ぬんだからな!
「なら、カナハ。相手に血反吐を吐かせてやれ。いくぞ、ハヤカ」
返事を待たず武器庫を後にした。
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