第125話 終了

 最初の一発が無人島の砂浜で寝ていた一匹に当たる。


 すぐに魔力が吸われ、おれの糧となった。


 討伐証拠として魔石を残そうかと思ったが、海竜の皮や肉、骨など使い道があるそうで、町の商人から売ってくれと言われているのだ。


 三十六匹もどうすんの? とか訊いたら魔法士や漁師を総動員させて解体するんだとよ。


 それでも無理だろうとは思うが、買い手が言うならこちらに反論はしない。まあ、十匹ほど運んでダメなら残りは無人島で保管させておこう。万能コーティングすれば何年でも保存可能なんだし。


「次!」


 砲の角度を変えて吸魔弾を射つ。


 万能補正により浜辺であたふたとする海竜へと直撃。魔力をいただく。


 次、次、と砂浜にいる五匹の海竜から魔力を根こそぎ奪い取った。


「魔力47000か。体も小さいし、雌なのか?」


 そう詳しく生態は調べてない。根絶やしにする相手だし、知ったからと言って対抗できる者は少ない。DNA情報と肉片を万能スーツに取り込めば充分だ。


「カナハはどうだ?」


 メインスクリーンにカナハが見てあるものを映した。


 こちらも万能補正で映像はクリア。大自然映像として売ったら大儲けできそうだ。


 人魚がどれほどのスピードで泳ぐかは知らんが、今は百二十キロで海中を泳ぎ、吸魔槍を振り回して海竜を狩っていた。


「万能スゲーな」


 まあ、マーメイドスーツを使いこなすカナハもスゴいと言えばスゴいのだが、海中であんな動きやこんな動きができるとか、万能変身能力じゃなければこんなことはできまいて。


「しかし、海竜も無謀だな」


 群れ習性か、リーダーの支配が絶対なのか、次々と狩られているのに逃げようとしない。狂ったようにカナハに襲いかかっていた。


「ん?」


 水中レーダーがこちらへ向かって来る海竜を捉えた。


 数は六。その中の一匹の魔力が高いことからこいつがリーダーなのだろう。


「こちらを驚異と見たか?」


 あれだけ賢い海竜なら、カナハかおれ、どちらが驚異かわかるのだろう。だが、獣は理性より本能を優先させるもの。一度燃え上がったら止まらないのだろう……。


「強者と言うのも融通が利かないものだ」


 自分が強く、狩る立場が長かったせいで襲われると言うことが理解できず、今でも自分たちが上位と思い込んでいるのだろう。


「まあ、上には上がいる。それを忘れるな、だ」


 万能変身能力やレベルアップの体があろうと絶対ではない。それを覆させるヤツは必ずいる。知恵者やバケモノはいるのだ。驕りが最大の敵と知れ、だ。


 ただまあ、敵として向かって来るなら容赦はしない。おれのすべてを出して駆逐してやるまで。


「右舷発射菅オープン。ターゲットロック。吸魔ミサイル、発射!」


 対海竜用に作った自動追尾吸魔ミサイル。一度ロックされたら逃げることは不可能。食らい尽くすまで止まらない。 


 発射された吸魔ミサイルは、各自ロックオンした相手へと向かい、上空から襲いかかった。


 推進部とカバーを分離して吸魔弾を射出。水深の浅いところを泳いでいたので難なく海竜の背に命中した。


 リーダーらしき海竜だけは吸魔ミサイルに気がつき、咄嗟に回避したが、それは無駄な抵抗と言うもの。吸魔ミサイルがすぐに軌道を修正してリーダーらしき海竜の背に吸魔弾をぶち込んだ。


「無駄な努力、ご苦労様」


 お前たちが翡翠ひすいくらい賢ければ共存共栄できたんだが、狩り狩られる立場では相いれない。世の弱肉強食を恨むがよい。


「……それが嫌なら世を変えろ、だ……」


 自分に諭すように呟いた。


 明日は我が身。変えたきゃ死なないように頑張りましょう、だ。


 意識を切り替えカナハの映像と討伐数を見る。


「もう十二匹を倒したか。さすがだな」


 マーメイドスーツにも小型だが吸魔魚雷を積んである。もちろん、追尾型だから逃したりはしません。


「今ので十三か。てーと、残りは十二匹か。まだ逃げないか」


 まあ、頭に血が昇っているだろし、連絡の取りようがないんだから無理ってものたわな。


 さらに一匹、また一匹と狩られていく海竜。残り三匹になったところで海竜が逃げ出した。


「だが、もう遅いよ」


 根絶やしと決めたからには逃すつもりはない。


「カナハ、ご苦労さん。凄かったぞ。残りはこっちで始末する。山梔子くちなしに戻って来い。ハハルは海竜を無人島に集めてくれ」


「……わかった……」


 さすがのカナハも疲れたようで返事に力がない。今日はもう休め。


「父さん、さすがに多いよ」


「残りを片付けたらおれもやるよ」


 さすがにそこまで鬼じゃない。すべてをやらせたりはしないさ。


「左舷発射菅一番から三番までオープン。発射」


 で、海竜退治、ほぼ終了です。


 あっけねーなとかは言わないで。元々、そんな大仕事ではないのだから。


「あと一踏ん張り。頑張りますか」


 うちに帰るまでが仕事。油断せずいきましょうだ。

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