第112話 強き嫁
夕方六時くらいで行商隊の連中の移動とタナ爺への丸投げが終わった。
「ご苦労さんな。お前たちがいてくれて助かったよ」
無茶を聞いてくれた姪たちに労いの言葉をかけた。
「あたしは運んだだけだし、大したことはしてないよ」
「あたしは余り役に立てなかった……」
ハハルはなんてことないと言い放ち、カナハは思ったようにできなかったことに落ち込んでいた。
「そんなことないさ。二人がいなけりゃ夜中までかかっていただろうよ。ありがとな」
二人の頭を撫でてやる。お前らがいなかったらこんなに上手くは回っていなかっただろうよ。
「さあ、歓迎会をやるぞ」
最初はハハルたちだけで、と思ったが、一度はおれたちとの顔合わせの場は必要だろう。家と仕える者としての立場を知らしめるためにもな。
「わかった。皆を連れて来るよ」
女子寮(仮)へと駆けていった。
「カナハは疲れただろう。風呂に入ってさっぱりして来い。飯食ったら眠たくなるだろうからな」
お前にブラックはまだ早い。今は人らしい生活がどれだけ貴重かを学ぶがよい。
「わかった」
うちの風呂は全自動化したのでいつでも入れるようになっています。
おれは万能スーツを透明化して薄く纏っているので汚れはない。が、精神は汚れているのでビールで洗うことにする。
家へと入り、いつもの席につくと、ミルテがよく冷えた瓶ビールを持って来てくれ、ジョッキに注いでくれた。
「旦那様。お仕事ご苦労様です」
そんなありがたい言葉をつけてくれる。おれの嫁、マジ良妻。
一段と旨くなったビールを一気飲み。プハァー! ビールウメー!
「さあ、旦那様」
再度注がれたビールはゆっくり飲みながら居間を見渡した。
日々拡張される我が家。最初は六畳間くらいだったのに、今では二十畳くらいになり、十人は囲める食卓が中央に鎮座していた。
家のことはミルテに権限を与え、拡張や内装、配置などはミルテとハルミの趣味に任せた。
たぶん、村長の屋敷を見本としたのだろう、なんか似ていた。
おれとしては六畳間くらいが落ち着くのだが、家を興すのならこのくらいは必要か。新たに五人の娘を受け入れ、こうして歓迎会を開くとなると六畳間では無理だからな。
「ミルテ。女ばかりの傭兵団をうちに引き入れた。陽炎団と言って、おれが傭兵時代に世話になった人の娘が仕切っていた。歳は確か二十九だ。妹分として接して来たが、あちらはそうは思ってないと思う」
前世のおれも今生のおれも鈍くはないし、色恋は経験して来た。まあ、三角関係はしたことはないし、結婚もこれが初めて。男女間のアレやコレを割り切る自信はない。たぶん、なるようになるだろう。
「卑怯な言い方になるが、お前が嫌なら──」
「──あたしは、旦那様の嫁です。旦那様の望むままに従い──いえ、旦那様の力となります。あたしも、こんな世は嫌ですから」
屈託のない笑顔に申し訳なさに押し潰されそうになる。そして、ありがたさで胸がはち切れそうになった。
「ふふ。旦那様は知らないでしょうが、サエリオとは旦那様の取り合いをしてたんですよ」
サエリオとはおれの妹だが、長いこと口にしなかったせいか、記憶が朧気にしか出てこない。どんな顔だったかも上手く出て来なかった。
「旦那様に惚れるのはしかたがありません。強くて優しくて逞しい方ですからね。前の旦那には悪いですが、いつも旦那様を思って、旦那様の子のように育てて来ましたから」
それは本当に前の旦那に悪いよ、ミルテさん。同じ男としてグサッと来るよ。墓まで持ってって欲しがったよ……。
「……そうか。頑張ったな……」
前の旦那に申し訳ないと思うが、生きるには夢や希望は必要なもの。頑張って生きて来たミルテを否定するつもりはない。
「生きたければ生きる力と知恵を身につけろ。敵を増やすより味方を増やせ。従順な振りして上手に相手を使え。最後まで立ってたヤツが勝者だ、って旦那様が教えてくれましたから」
原因、おれでした! ミルテの糧となったいろいろな方にごめんなさい!
「あたしは勝者です。これからも勝者ですよ」
その笑顔が恐ろ可愛く、恐ろ頼もしい。
「ふふ。お前はおれの嫁になるべくしてなった女だな」
「はい。そうですよ。だから、旦那様は旦那様が思うままに生きてください。そんな旦那様に惚れたのですから」
なにかいろいろ込められただろうビールが注がれ、それを一気に飲み干した。
今夜はいつも以上にハリキリますか!
現代人(なろうを読んでるひと)に最強の剣はなによ? と問うたらコアな剣が出ると思うけど、大抵はエクスかリバーと答えると思うわけよ。
で、エクスカリバーってどんな剣よ? と問うたらピカーと光ってなんでも斬っちゃう感じ? って答えると思う。
そんで、そんな剣を望む剣士は剣士たりえるのか? 最強たる剣士となりえるのか? 無敵になるのか? どうよ?
ちなみに、タカオサは剣士ではありません。徴兵された使い捨てに剣など与えられないから。
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