第107話 ハハルの罠
昼飯をいただき、少し休んでから
「ハハル。
操縦法は
「わかった」
毎日優月に乗っているせいか、気圧されることなく乗り込んだ。
「カナハはおれとだ」
「うん」
2号に乗り込み、発進する。
上空は雲っているが、視界に問題なし。半径十キロに飛行生命体や飛行物はなし。工場ではアホみたいに魔力を注いで一機ができたようだが、まだロールアウト前。広場に置いてシミュレーションしているようだ。
上空から見れば
護衛の者も
ちなみに、吸魔弾は形状記憶なものなので再利用可能です。回収し忘れても大丈夫。三日後に魔力になっておれの元に返ります。
進路を三賀町へ向け、加速する。
横を見ればカナハは平然としている。胆が座ったヤツだ。
三十分もしないで
一応、前に来たときにHマークをつけたが、安全のためにもうちょっと大きくしたほうがいいかも。あと、工場の生産が増えればこちらに置いてくれと言われそうだから発着場を増やしておくか。
「ハハル。先に降りろ。3号の左側に2号を降ろすから注意しろよ」
発着場は一つしか作ってないのです。
「わかった~」
軽い返事とともに降下し、ふわりと着地させた。
「ねーちゃん上手いんだ」
「頑張ったからな」
まあ、強制させて頑張らせたんだけどね。
「あたしも覚えたい」
姉にライバル心でもあるのか、声に意気込みを感じた。
「まあ、覚えていて損はないと思うが、そう急いで覚えることはないさ。お前は、魔法士で実動部隊を任せたいからな、まずは戦闘訓練と実戦の積み重ねだ」
いざとなればマギスーツがサポートして
ハハルが2号から出るのを確認してから3号を五メートルくらい離して着陸させた。
外に出ると、管理の兵の代表が敬礼(昔の中国で使ってたような、手のひらと拳を合わせて頭を下げる感じ。昔に大陸から伝わってきたものらしい)して迎えてくれた。
「お勤めご苦労様です」
おれも兵士の敬礼で答える。久しぶりにやったわ。
「管理を任されているヨシハと申します」
階級章とかはないが、剣を持てるのは兵長以上。下っぱは棒を持つ。平時の場合は、だけど。
「そう言えば、タカオサ様は元兵士でしたな」
「徴兵されたただの田舎者ですよ」
「ご謙遜を。あの戦争で生き残り、傭兵として名を残す方がただの田舎者とは言えませんよ。敬礼に敬礼で返したところから兵長まで出世されたのではありませんか?」
ヨシハさんは、四十前半っぽい。兵士としては三線級落ちな感じだが、管理職としては一線級のようだ。
「特戦兵長を賜りました」
神風特攻隊の隊長みたいなもんだがな。
「特戦ですか!? よく生き残れましたな! 全滅したと聞いておりましたが」
「全滅ですよ。悪運のいいのだけ助けられただけです」
たぶん、万能変身能力の自動防御が働かなければ殲滅魔術で確実に死んでいただろうし、将軍が捜索隊を出してくれなければ餓死してただろうよ。
「……悪運でもあの戦いを生き残っただけで尊敬に値しますよ……」
インチキな力で尊敬されても恥ずかしいだけだわ。
「まあ、今は兵士ではありませんし、傭兵みたいなもの。お気になさらず」
あの戦争で得たものはなにもないし、誇れるものなどなにもない。クソったれな状況を生き延びた。ただそれだけだ。
「今日から作業を始めますので、そう町長にご報告ください」
「わかりました。なにかあればいつでもお声かけください。副事官よりタカオサ様に力を貸せと命令されておりますので」
「ありがとうございます。なにかあればお声をかけさせていただきます」
いつまでも無駄話をしていては日が暮れてしまう。ちゃっちゃとやりますか。
「ハハル。
「わかった。買い物してきてもいい? 村の女衆が色気づいて紅とか欲しいって言ってるのよ」
色気づけさせただろうハハルが孔明に見えてしょうがない。おじちゃん、劉備にはなれんからね……。
……おれの手に負えなくなったらゼルフィング商会に出向させようっと……。
2号のコンテナから三輪バイクとリヤカーを出して連結させる。
「歓迎会があるんだから早目に帰って来いよ。なにかあれば連絡しろな」
「わかった。じゃあ、いってきまぁーす!」
「いってくる」
リヤカーにカナハを乗せ、町へと出発した。
……説明なしに乗っていったけど、おれ、バイクの乗り方シミュレーションに組み込んだっけ……?
見えなくなるまで考えたが、まあ、時間があるときに学べと渡した学習用タブレットに入れたんだろうと納得し、三賀町での拠点を作り出した。
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