第100話 丸投げ
夫婦のアレやコレな営みを済ませ、ミルテの寝顔を堪能してから夜のお仕事へとでかける。
とその前にタバコを一服。気持ちを落ち着かせる。なんの? とかは訊かないように。男は賢者にならなくちゃならない場合があるのだよ。
「
音もなく
「ん? 酒か?」
「最近うるさくて堪らんぞ。もうちょっと静かにできんのか? あと、酒はもらう」
「いろいろ人がきてんだから我慢してくれ。堪えられんなら山にでも小屋を作るか? 餌の時間は下りてきてもらわんとならんがよ」
さすがに山にハルミをいかせられないからな。
「嫌じゃ。我はここが気に入った。静かにせい」
「我が儘なやっちゃな~。まあ、なるべくこの上は飛ばないようにするから我慢しろ。おれも休める場所は静かにしたいからな」
皿と清酒を出して、注いでやる。
「
なに気に魔力を見たら総量が120000以上になっていた。
「ああ。と言うか、怪我をする前以上に調子がよいな。今なら山鹿でも余裕で狩れそうじゃ」
山鹿とは森王鹿のことな。狛犬界ではそう呼んでるらしい。
「なら、運動がてら狩ってくれ。運ぶのはこちらでやるからよ」
「うむ。よかろう。食っちゃ寝ばかりだと体が鈍るからの」
意外と素直に引き受けてくれた。断られると思ったのに。
「まあ、滅ぼさない程度に頼むぜ。お前の子にも狩りを覚えさせなくちゃならんのだからよ」
「わかっておる。それで、子たちはいつ頃目覚めるのだ?」
子たちのライフデータを頭の中で見る。
「順調に育ってるから一月もしないで目覚めるだろう」
「そうか。それはなによりじゃ」
表情はわからんが、温かい感じは伝わってきた。母親だね。
「ほんじゃ、仕事に取りかかりますか」
じゃあ、その場所はどこよ?
「……ないので造ります……」
って答えるしかないじゃない。
造る、と言ったものの、規模が規模なだけに家の近くには造れない。輸送機の発着を考えたら最低でも一キロは離したい。
「警備とかはドローンにさせればいいが、無人ってわけにもいかないしな~。どうするよ、おれ?」
雇うにしても誰構わず雇うことはできないし、育てるにも時間がかかる。
あの二人のことだから輸送機は容赦なく買うだろう。
「とてもじゃないが、輸送機ばかりに構ってられないぞ」
他にもやることはある。ゆっくりしたいときもある。夫婦仲を深める時間も欲しい。
「クソ。誰かに丸投げし──!」
と自分の言葉に名案が閃いた。
そうだよ! なにもおれがすべてをすることはないんだよ。任せるところは任せたらいいし、欲しいところに売ればいいんだよ!
オン商会かゼルフィング商会かはわからんが、輸送機製造工場を売り、飛行場をどちらかの金と人手で造らせる。おれは使用料を払って利用させてもらう。
万能変身能力から作り出したものはおれの一部。いざとなれば停止もできるし、支配もできる。一部、魔力の横流しも可能とする。
詐欺のようなもの、いや、詐欺以上のものだが、自分や家族を守るため。安全装置と考えれば罪悪感もない。オン商会やゼルフィング商会が敵対しなければ、どちらにも利益となる。仲良くいこうぜ、だ。
売れるかはまだわからないが、家から二キロ先の開けた場所を均し、朝日型輸送機製造工場を造り、野球場くらいの広場を耕す。
朝になったので、一旦家へと帰り、朝飯をいただく。
皆に指示を出し、なにか問題があれば連絡するように言い、また輸送機製造工場と開拓を再開させる。
朝日型輸送機製造工場の横に十人くらい住める家と井戸を掘り、ライフラインを築く。
「さすがにこれだけ騒げば魔物が寄ってくるか」
人の生息域は狭く、魔物の生息域は広い。そして、人は魔物の餌の一つ。狩らねば人は生きられない。
ってことを教えられて育ったが、今は魔物のはおれの糧であり、おれが富めるための宝である。
ワサワサと現れる黒走りが銅銭に見えてしょうがない。これはなんのつかみ取り大会だ?
「ってか、つかみ取り放題で追いつかないな!」
大きな巣が近くにあったのか、津波のように襲ってきやがる。花木村にいってたら一時間で全滅してるな、コレは。
ネイルガン二丁射ちの連射で狩っているが、分単位で五百本の針が消費されていく。
まあ、今は魔力があるので一千万本でも余裕で射てるので、千でも万でもきやがれだ。
「回収ドローンも増やさなくちゃだな」
もう八百匹は狩り、まだ五百以上はいそうな雰囲気だ。
黒走りは魔力は少ないが、糸はシルク並みに綺麗で着心地もよく、売れるはずなので、ドンドン現れてくれ。
次々と狩り、ドローンが回収していると、万能レーダーに総魔力40000の反応が現れた。
「親玉登場か」
知恵があれば強敵が現れたと理解し、逃げるものだが、蟲系は執拗に襲ってくるからたちが悪いんだよな。まあ、万能変身能力の前では美味しい性質だがよ。
まずは雑魚を一掃。数匹程度になったら
親玉が死んだらさすがに逃げ去る黒走り。また増えておれに富を与えてくれよと見送った。
おれには美味しい獲物でも、他の人には脅威でしかないので、鉄網状で工場を囲み、防衛ドローンを百機ほど放った。
「これだけやっても魔力はまだあるのが嬉しいね」
さあ、これからも魔力を貯めるためにも顧客様のところまで道を造りますか。
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