5-6
『緑色ノ線ニ達スルマデニ我ヲ倒セレバ、今ヨリ住ミヨイ位置ニ島ハ移動スル。緑色ノ線ヲ越エタラ現状維持。赤色ノ線ヲ越エタラ光ノ柱ニ近クナルカ又ハ遠クナル。砂ガ落チキレバ時間切レ。以上ヲ持ッテ〝神ノ試練〟ヘノ説明ヲ終了。汝ラノ奮闘ヲ期待スル』
「〝嵐〟の原因はこの砂時計ですか。倒すだけならまだしも時間制限のおまけつき。本当にいけ好かない神ですね!!」
依夜の体から紅い昂輝があふれ出す。それには意にも介さず、もう言うべきことは無いという事なのか、蟷螂もどきの機械物体は無言になり、ただ出現した場所に佇んでいる。
「落ち着くのじゃ、依夜。我を忘れては相手の思うつぼぞ!」
依夜と蟷螂もどきの機械物体の間に入るようにルアーハが前に出る。
「詞御、とてつもない力の気配をあの機械の虫もどきから感じます。力の出し惜しみはなしです!」
セフィアに言われるまでも無く、それは詞御も感じている。だからこそ、校内での序列決定戦や闘いの儀でも使ってない“力”に手を付ける準備をする。それは、昂輝の
『……ソレデハ、〝神ノ試練〟ヲ開始スル』
頭上高くにある砂時計がぐるんっと百八十度回転する。乳白色の砂がさらさらとほそいくびれを通って、空の底に舞い落ちる。
「倒すのは当然だが、約束したからな。繁栄を守って生きて帰る、と。緑色のラインに達するまでに奴を倒す。最大戦闘力、短期決戦だ!」
「「「了解っ!!」」」
詞御の言葉を皮切りに、それぞれが行動に移る。依夜はルアーハに搭乗するや否や莫大な昂輝と雷の力をその身に纏う。詞御もまた、戦闘に特化した昂輝で創り上げた大刀を出現させ融合した右手一本で持つや否や空いた左手で女王から貰った刀を抜刀。こちらにも変質させた白銀の昂輝を完全浸透させてより強化された昂輝刃を形成。
消滅の力を持ったセフィアの大刀と左手の携えた擬似上位・乙型の力を秘めた昂輝刃の二刀流。それに加えて、戦闘に特化した昂輝で詞御の戦闘能力の底上げによる全ての強化。これが詞御に今考えられ出来うる最大限のバトル・スタイルだった。
一人と一体が巨躯をほこる蟷螂もどきの機械物体に向かって走り出す。蟷螂もどきの複眼が灯った。すると、百足もどきの八つの節の下腹部がカパッと開き、中から人間サイズの同形態が無数に出現してくる。
「小ざかしいまねをする!」
詞御は、左手に持った刀を一閃する。その軌道に沿って、銀色の剣閃が放たれ、人間サイズの蟷螂もどきを吹き飛ばす。続いて、右手の大刀の切っ先から消滅の光線を放出。軌道上にある敵をなぎ払う。
ルアーハに搭乗した依夜は、両腕を巨大なハンマーに変え、莫大な雷の力を上乗せした一撃を敵の群れ中枢もろとも地面に叩き込む。雷は地面を放射状にほとばしり、人間サイズの敵をことごとく黒焦げにして再起不能にしていく。だが、数は減らない。まるで無限かというべき数が百足もどきの八つの節からあふれ出て来る。
本命に辿り着けない。
焦りが二人と二体に襲い掛かる。その間も砂時計の砂はサラサラと流れ、徐々に溜まり始めていた。時間にして十分が経過しようとしている。ルアーハによる飛行での接近を試みたが、人間サイズの敵機から光線らしき物を過剰照射され近づけないでいた。何度か本体に遠距離からの攻撃を行うものの、全て不可視の膜に弾かれ、さしたるダメージを与えられないでいる。
〔これでは、らちが明かない〕
〔どうしますか、詞御!? 砂時計の砂が緑のラインに達するのはこれまでの時間経過から見てもうすぐです!!〕
〔仕方ない。〝アレ〟を使う。対人相手には使えないが、あいつになら遠慮なく使って問題ないだろう〕
〔〝アレ〟ですか、危険すぎではありませんか?〕
〔大丈夫、範囲は極力限定する。この状況を打破するにはもう〝アレ〟しかない〕
〔……確かに、時間的にも形振り構っていられませんね。了解しました、発動の準備に取り掛かります〕
大刀状態のセフィアに念話でやりとりした詞御は、今から決行すべき事を伝えるべく依夜とルアーハに念話を飛ばす。
〔依夜、ルアーハ。一旦自分の後方に引いてくれ。そして、昂輝を最大展開して防御にまわすんだ。今から大きな一撃をお見舞いしてやる、あのくそったれた神とやらにな!〕
〔わ、分かりました。指示に従います。この状況を打破する手段があるのですね!〕
〔ああ! 対人戦闘では使えない代物だけどな!!〕
依夜と念話で会話しながらも、間合いにいる敵機を切りまくる詞御。その中で、とある一点を探していた。
(狙いは、生まれ出てくる敵機の一機、その触覚っ!!)
〔準備完了しました、いつでもいけます詞御〕
〔了解! 消滅波の壁を最大展開、衝撃にそなえろ! 行くぞ、〝
詞御は凝縮した消滅弾を今まさに八つの節から出てくる蟷螂もどきの触覚にぶち当てる。次の瞬間、その弾着点を中心にした半球体のドーム状の光の塊が、無数の人間サイズの蟷螂もどき全てとその本体である親玉を包み込んだ。巨大な爆発と爆風がこの空間一杯を襲う!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます