第18話 雨

少し調子に乗って、フネの家とは反対の方へ来てしまった。まだ陽も高いし、特に予定もない二人は、それでも良かったのだけれど、空模様が急に怪しくなってきた。

「なんだか、曇って来たね…」

「うん、雨が降るかな?」

「どうだろうね…、風が吹いてきたから、こりゃザーっと来るかもね」

じゃあ帰ろうか、、と方向を変えたところで、バタバタバタ!!!!!と音を立てて雨が降ってきた。ゲリラ豪雨というやつだ。

「うわ、たいへん!!」

私は着ていた日よけの薄いパーカーをフネに被せ「フネさん、ここなら、私の家の方が近いから、一旦、私の家に避難してもらっていいかな?」と提案し、了解をもらって、アパートに急いだ。

アパートには5分ほどで着いた。だけどフネも車椅子もびっしょりに濡れてしまっていた。

フネに教えてもらったようにボールを転がさないように意識して、アパートの段差やスロープもなんとかクリアし、段差は階段の要領でフネに部屋へ上がってもらった。

私の部屋には丸い椅子しかなかったけど、なんとかフネに座ってもらった。「ごめんね。こんなところで」タオルを渡すと「大丈夫だよ。こんぐらい平気だよ」とフネも気づかってくれたが、私は責任を感じていた。外に行こうと連れ出したのは私だ。

こんなこと予測もしてなかったし、何もかも簡単に考えていた浅はかな自分を責めていた。

「お願い、フネさん。これに着替えて。」

「大丈夫だって。じきに乾くから」

「ダメ! フネさんが風邪引いたらダメ! 私が辛いの。もう一緒に出かけようと言えなくなるから」

何度かお願いをしてやっとフネを着替えさせた。上から下まで私の服を着たフネは、かえっておばちゃま度が増して、可愛く見えた。

着慣れないデニムのパンツに白とグレーのボーダーのTシャツにグレーのパーカー。

「フネさん、似合うよ。可愛い」と言うと「そうかい? アンタの服は着やすいね。パジャマみたいだよ」と笑って両手を広げてる。「フネさん、危ない。両手は止めて。その椅子、背もたれ無いんだからね」「ああ、そうだった。つかまっとくよ」小さな物入れの扉につかまって大人しくなったフネは、興味有りげに私の部屋をキョロキョロと見ている。

私は小鍋にお湯を沸かし、お湯が沸くまでに車椅子をタオルでふいて、マグカップとカフェオレボウルにお茶を用意した。

私も残り少ない服をやりくりして、着替えた。フネとお揃いの服を着たようでくすぐったい気持ちだった。

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