第17話 デコボコ道や坂道で

マックを後にした私達は、少し散歩をして帰る事にした。フネがこっちと言えばその向きへ。止まってと言われれば止まる。あっちといえばまた歩き出す。

フネは「懐かしいね、、あれ?、たしか、酒屋がここにあったんだけど、変わっちゃったね」「昔はこの辺りに川があってね、よく子供なんかが遊んでいたもんだよ。今はこれ、道路になっちまった」などとひと昔前の風景を語ってくれた。私はその景色を想像しながらゆっくりとフネを押して歩いた。


ガクン!!「ぁっ!!!」

きゅうに車椅子がつんのめり、前に傾く。私はとっさに後ろからフネを抱きしめた。

フネのキャシャな身体がわたしの腕に抱えられ、前に飛び出して転ぶ事はなかったが、背筋に冷たい電気が走るほど、危なかった。

見ると、車椅子の車輪が5センチほどの段差に当たっていた。

「ご、ごめんなさい。フネ、フネさん、、大丈夫ですか?」と恐る恐るフネの顔を覗くと、フネは涼しい顔で「あたしは大丈夫。はなっから、アンタの事なんざ信じていないからね。 ほらこの通り、しっかり踏ん張っていたよ。」と肘掛けを握ってみせた。

私は深く深呼吸して。フネと歩く時はぼんやりしていちゃダメなんだ。私はフネの目や足の代わりなんだ。しっかりしろ!!自分!!と気合を入れた。

フネはそれを察したのか「アンタね、私を押して歩く時は、私をボールだと思いなさい。 ボールは転がるよ。そして弾む。」

ボール? フネはボール?

「さあ、行くよ。右へ進めておくれ」「はい」

その後は、時々フネのアドバイスもあり、「信号を待つ時はもうちょと後ろでね、アンタ、しっかりブレーキ止めてよ。」

とか、「ほら、あたしはボールだよ」と、このぐらいの傾斜なら後ろ向きで下らないとボールが転がってしまうな、、とか、デコボコ道を勢いをつけて行こうとするとボールが弾んでしまうから、静かにゆっくり押したほうがいいんだな。とか、だんだんコツがつかめた。時々フネの顔色もうかがう。「フネさん、疲れてない?」「押して歩くアンタの方が疲れてるだろう?」「ぜんぜん大丈夫!」そう元気に応えたが、ホントのところは緊張が続いたからか、力が入ってしまい、手や肩に痛みがあった。でも、私は頑張る。フネを守る。


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