第11話 2階

1階の片付けはなんとなく落ちついた。

フネはピカピカにしたいわけじゃないらしい。

「こんぐらいになりゃ上等だ」と言う。

私としたら、あれもこれも磨きあげて、せっかくだからピカピカな家にしたいのに。

棚の中だって、古いけど磨いたら素敵なはずの食器や小物も沢山あって、ピカピカに磨いてフネに喜んてもらいたいのに、、。

フネは「そんなところはどうでもいい。まだやることが山ほどあるよ! ほれ、今度は2階だよ!!」と言う。

フネに促され、2階に上がると扉が5つほどあった。部屋は全て薄暗くカーテンが引かれていて、久しく人が出入りしていないような空気の留まりがあった。

階段の下からフネが「1番おくのーっ、ほれ右の部屋に〜」と指示を出してくるが、なんとなく勝手に部屋に入って行くのに抵抗があり「ちょっとぉ、フネさんも来てよー」と言うと

「バカだね、私は足が悪いの忘れたのかよっ」と返事があった。

私は階段を降りてって「フネさん! 手の力はあるんだよね」と言って階段の手摺にフネの手を置いた。「動く方の足どっちだっけ?」「左」「じゃあ、私がフネさんの右足を支えてる。フネさんは自分の腕の力でよいしょと上に身体を引き寄せてみて」「なんだよ」「左足を出して。いちにーのさんっハイ!」

「あら、登れた」「そうだね。 次、こっち。行くよ。こっちは私が上げるから、しっかりバランスとってね」「いちにーのさん、ほい」私がフネの後ろからフネの右足を支え、右足を上げて、一歩一歩足を揃えながら階段を上がっていった。

フネはすぐにコツをつかんでリズム良く2階に上がれるようになった。

2階に上がり奥の部屋へ。フネを支えながら「フネさん、電気どこ。つけて」とフネを動かす。フネが手探りで壁のスイッチを押すと、パパ、パチパチ、、と明るくなり、白いクローゼットが広い部屋一面に現れた。棚には帽子やらバッグ。こっちの鏡の前にはアクセサリーのケースが何段も…。

「はーーー、これは…」

フネは鏡の前の椅子に腰掛けて「あー、疲れた。アンタ、年寄りになんて無理をさせるんだい」と悪態をついている。

そして「下に行って、私の杖を持って来てよ。あと、ゴミ袋ね」と指令。

「はいはい、わかりましたよー」

「ハイは1回」

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