第7話 身の上

「フネさんは、ご家族は?」

「あぁ、あたしかい? 息子は海の向こう。娘は空の向こう。夫は随分前に亡くなった」

「で、こんな立派な家に独りで暮らしてるの?」

「立派なもんかい。たいした家じゃないよ。随分古いしどうしようもない家だよ」

いや〜、立派よ。と私はきょろきょろと向きを変えながらリビングの向こうや階段の上を見ていた。

「それはそうと、アンタは?」

「ああ、私? 私はアパートに独り暮らし。実家はあるけど、お姉ちゃん家族が同居して、もう私の帰る家は無いんだよ…」

「いいじゃないの。自分で働いて自分で借りた部屋で自由にして居られんだろう、それこそ立派なもんだよ」

「まあ、、ね。」私は力無く笑った。情けない今の自分を再確認するようで、下を向いた。

「さてと、フネさん。私、ご馳走になった代わりに、片付けて帰るね」

と出前の器を片付けるために台所に入り、洗い物をしようとすると、「うわっ何これ」ペットボトルの山が見えた。

「なんだい?アブラムシでも出たかい?」

「違うよ、ペットボトル。なんで捨てないの?」「それね、いつ出すのか知らないんだよ。ゴミ出しのボランティアさんが来てくれるんだけど、それの日に来ないんだよ。まあ、腐るもんでもないから、置いときゃいいよ」「月曜日だよ」「え? 今日は何曜日だっけ」「えっと、、日曜日。…、てことは明日だ。明日出せるよ」

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