第3話 老婆を保護する
商店街から少し外れたスーパーへのちか道は公園と、マンションの間の細い道を通る。
公園のフェンスには蔦が絡まり、薄暗い影になっている。
抜け道だが、虫がいそうで普段は避けて通っている。
でも何故か、今日は青い空の下を避けたいような気分で、ついこの薄暗い道に入ってしまった。真っ直ぐ息を止めて突っ切るつもり。
と、思ったら、フェンスの途中に動かない人影を見つけた。こ柄だな。子供だろうか。
ぎりぎりすれ違えるか。何者だろう、気味が悪いが気にもなる。こちらに気づいてどちらかに進んでくれるだろうか、、それとも。
と、立ち止まると、正体が見えた。
老婆だ。杖を持って、フェンスに寄りかかって、、というかしがみついている。
「ぁ、あの、、」2日ぶりに出した自分の声は思ったより掠れていて、老婆に届かない。
もう少し近づき再度「あのう、」と声をかけると、ゆっくり老婆が顔を上げた。
帽子の下から口が動く。「は?」
細い目でこちらを見ている。
「だ、、。大丈夫ですか?」
こんな時はこう言うものだろう。
「わからない」
え?「大丈夫です」じゃない答えが返ってくる事を想定してなかった。
こんな時は、、え〜と、
「ど、どうしました?」
「足が、動かない」
「え???」
「あなた、私の家に行って車椅子を持ってきなさい」
「え?? いや、お巡りさんか救急車呼びますよ」と携帯を出そうとすると、
ババ、、いや、お婆さんは「大袈裟にするな!」と大きな声を出した。
私は「って、言ってもね、私、お婆さんの家知らないですよ。誰なのかもしらないし」
「え? あんた私を知らないの?」
「知るわけないじゃないですか、今初めてすれ違う人ですもん」
それじゃ。と走って引き返そうかと思い向きを変えると「ちょっと、ちょっと、若い人。待って。じゃあ、あなた、あなた、助けなさいよ。年寄りが歩けないって言っているのに置いて行けるの?」と呼び止められた。
マジか?私がどうやって?
「え?、私が?」
「そう。見たところ、力も無さそうだし気もきかなそうだから、はいコレ」
「え?鍵?」
「そう、すぐそこの、その家だから、玄関に車椅子があるから。早く行って来て。車椅子取ってきて」
振り返るとさっき通ってきたところに古いちょっと大きめな一軒家があった。マンションの下にある森のようなあれだ。
「あれ?」と指さすとババァも杖を上げて「あれ」と。
すぐそこだった。
激安スーパーで柿の種を買って帰る予定が…何故こんなことに、、。
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