43 ~クライマックスが近いぞぉ~
「おや、ずいぶんと仲が良くなりましたね」
ハアトは二人の女子を認めるやいなや声をかける。その様子に微塵も狂いはない。
「なんであんたがそこから出てくんのよ。サクマはまだでしょ? あんたでも出来るんだ……神父」
「不本意ですが仕方がないでしょう。誰かがやらなければいけませんからね」
やれやれと両手の平を上に向け、縁起でもなくアルカイックスマイルを浮かべたハアトは、胸もとからひとつの懐中時計をとりだした。壁の外をみれば、ルートの天は白く濁り、またいつもの――あるいはいつでもない国の体裁をとりもどしていた。抽象的な国の色は、そのままハアトの顔色を映しているようで、今になってもサヤカはこの男に対しての不安を拭い去ることができずにいた。
「やっぱあんたは時計を見てるときの顔が一番良いね。てか、出来るんなら私もやって。――ったく、成仏といい、サクマといい、この国はどんだけ私を待たすんだよ」
サヤカが密かに抱えている面持ちに気がつくはずもなく、シズエは変わらず強気にくってかかった。表情は穏やかだが、口をついて出た棘は本物だろう。
彼の手もとでは今、開かれた時計がやわらげな光の膜につつまれている。
「いえ……よかった。その必要はなさそうです」
そう言って指をさした先は一枚の扉――この建物の出入り口――だった。
しばらくして、壁の開口ごしに足音がきこえてきた。加えて話し声と、時折混じる笑い声も。「到着しましたよ。立派でしょう?」そんな陽気な、いかにも自慢げな、自らのおもちゃを見せびらかす幼児のような声色が、扉のすぐ近くであげられている。
扉がついていること、屋根があること、そしてひっそりと国の隅に佇む立地条件。他にはない構え方をしたこの城を、サクマはなにもかも気に入っていた。そして国中の人々が集い求めている現状を、さも自分の手柄であるかのように振舞っているのだ。その様子に、アカリの前で打ちひしがれていた先ほどの彼の面影はない。歩いているうちに完全に立ち直ったようである。
一方、屋内では三人がまもなく現れるであろう訪問者、もとい主の姿を待ち構えていた。が、サクマの話が妙に長く、居ても立っても居られず扉に向かい乱暴に開け放ったのは……当然のごとくシズエだった。
「はやく入れよ」
シズエの眼下には、握りだまが腰に直撃したことで悶絶し、うずくまっているサクマ。そして――――。
「お姉ちゃん」
その後ろには驚きと困惑の声を発したダイチがいた。
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