第33話 ギルド最強のSランク冒険者、実はすでに会っていました

 優気は、依頼の細かな報告をする為にギルドマスターの部屋に来ていた。

「以上が、依頼の報告になります」

「ご苦労様。まさか、吸血鬼が関わっているなんてね。依頼のランクを上げてもう少し調査した方が良さそうだ」

「僕が受けた依頼ですし、また僕とカルマ達で調査してきましょうか?」

「確かに1度調査した事のある君達を向かわせるのが本来良いのだけれど、今の話しを聞いて最低でもBランクの依頼にしようかと考えているんだ」

「あ、それだと今の僕のランクじゃ依頼を受けられないですね」

「まあ、君には九尾や銀狼おまけに吸血鬼まで仲間にしているから実力的には問題ないとは思うけれどね」

「うっ、僕ももっと頑張ります」

「ああ、すまない。君のことを悪く言うつもりじゃないんだ。ゆっくりで良いから冒険者のランクを上げていけば良い。そうすれば、力も知識もおのずと付いてくるさ」

「はい。・・・そう言えば、ギルドで一番冒険者ランクが高い人は誰なんですか?」

「おや、知らないのかい? 彼は結構有名なんだがね」

 エルは、机に用意されたお茶の入ったティーカップに手を伸ばし口元に持って行く。

 一口お茶を飲んで、笑顔で答えた。

「冒険者ランクS、ギルド最強の男。その名は、レイン・リエーフ。君がさっき落とし物を拾ってあげた男だ」

「・・・え、ええ~~~~~!!!!」

 驚きのあまり大声を上げる。

 エルは、優気の驚く様子を見てクスクスと笑う。

「その様子だと本当に彼の事を知らなかったんだね」

「え、さ、さっきの人が? 確かに凄いオーラを感じましたけど、まさかギルド最強だったなんて」

「まあ、彼はSランクという事もあって高難易度の依頼ばかりを受けるからね。中々ギルドに顔を出すことが無いんだ」

「そうだったんですね」

「彼の印象はどうだった?」

「印象ですか? 遠くから見ているだけだとかなりの存在感で近寄りずらい感じもしたんですけど、直接話してみると何となく優しい人のなのかなって」

「そうか」

「今日会ったばかりですし、話したと言えるほどのものじゃ無かったですけどね。エルさんはどんな印象を持っているんですか?」

「そうだね、不器用なのかなと思うよ」

「不器用・・・ですか?」

 エルは、またお茶を一口飲んで優気に話す。

「ああ。彼は、この街の為に頑張ってくれているんだけれど、人と接するのが苦手みたいでね。昨日みたいに他の冒険者と喧嘩することも多々あるんだ」

 昨日の夜に、ギルド近くで騒ぎが起こっていたのを思い出す。

 複数の冒険者を1人で相手にしていた男がレインだった。

「喧嘩は全部仕掛けられたもので彼自身は軽くあしらっていただけなんだけど、そういった場面を見た人がドンドン噂を広めていってね。冒険者の中では彼に近づく事は禁忌タブーとされていたんだよ」

「そんなことが」

「だから、君以外に誰も彼に近づくことも声を掛けることもしていなかっただろう?」

「確かに、レインを避けていたような気がします」

 エルは、ティーカップを机に置いた。

 笑顔だが何処か少し悲しそうな表情で優気にあるお願いをした。

「優気君、レイン君に今度会ったらもう一度話しかけて貰えないか? 彼は強い。だけど、人は1人では生きてはいけない。私も気に掛けてはいるが、同じ冒険者でなければ分からないことも多い筈だ」

「1度だけで良いんですか?」

「それは・・・」

「1度だけじゃダメですよね? 何度も話して僕の事も知って貰ってレインの事も知っていく。そしたら他の人にもレインの良さが伝えられると思うんです」

「・・・冒険者達は変わり者が多いが、君もかなり変わっているようだね」

「えっ!? そ、そうですか?」

 「変わっている」と言われ少しショックを受けた優気。

 そんな優気を見て、エルは優しく笑う。

「ふふふ・・・」

「そんな笑わなくても良いじゃないですか」

「ああ、申し訳無い。レイン君のこと頼んでみても良いかな?」

「まず、レインに相手して貰えるかが分からないですけど、やってみます」

 エルに頼まれ、意気込む優気。

 レインとは優気が想定していてよりも早く再会することになる。


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