第30話  フードを被った謎の人を見ました


「ガリアさん、ご馳走様でした」

「おう! また来いよ」

 ガリアの店で食事をした優気達は、ギルドに向かった。

 優気達が去った後、リンネが店に帰ってきた。

「ただいま、親父」

「遅かったな、リンネ。丁度、兄ちゃん達が帰った所だ」

「兄ちゃん達?」

「ほら、お前が店で襲い掛かった男」

「うっ、嫌な思い出させ方するなよ。でも、そうか、来てたのか。謝り損ねたな」

「なぁに、また来てくれるさ。その時に謝れば良い」

「・・・そうだな」

「それより、頼んだ材料売って無かったか? 随分と時間が掛かったようだが」

「ああ、それが帰る途中の道で冒険者達が言い争っているのを見て」

「何!? 大丈夫か?」

 ガリアは、慌てた様子でリンネの体を調べる。

 リンネは少し鬱陶しく思いながら、ガリアをなだめる。

「別に平気だって。ただ、巻き込まれないように遠回りしてきたから遅くなった」

「そうか、それなら良かった。ん? リンネ、冒険者の争いって何処であったんだ?」

「えっと、ギルド近くじゃなかったかな?」

「う~~~ん」

「どうかしたのか?」

「いや、兄ちゃん達がギルドに向かうと言っていたからなぁ」

「えっ?」

「何事も無ければ良いが」

 ガリアは、腕を組み優気達が去って行った道を見ていた。


「ふわ~、満腹になったら眠くなってきたわね」

「確かに僕も眠くなってきた」

「日もすっかり沈みましたし、ギルドへの報告は明日にしますか? 優気様」

「う~ん、もう少しでギルドだから報告しときたいかな。皆は良い?」

「私は、優気様に従います」

「私は、まだまだ元気ですよ。主殿」

「あたしも別に良いわよ。って、あたしが眠いとか行ったのが原因か。あははは」

「エレナだけじゃなくて、僕も眠いって言っているから。それじゃあ、簡単な報告だけして宿に戻ろうか。詳しい話しを聞かれたときは後日にして貰うということで」

 カルマ達は首を縦に振り、優気の意見に賛成した。


 ギルドが見えてくると、大きな怒鳴り声が聞こえてきた。

「てめぇ! さっきは、よくもやってくれたな!」

「何だ、また来たのか」

「俺の仲間を呼んできた。今度こそ、ギタギタにしてやる」

「やれやれ、人数が増えても結果は変わらないと思うが」

「うるせぇ!」

 目に傷がある男とガラの悪い男3人にフードを被った人物が絡まれている。

 フードを被った人物は、恐らく男性だ。


「あれ? どうしたんだろう?」

「どうやら、もめ事のようですね」

「えっ? カルマ見えるの? 僕は、暗くて良く見えない。誰かが怒っている声は聞こえるけど」

「冒険者4人がフードを被った人物を囲って、襲おうとしていますね」

「どうしよう、助けにいかないと」

「いえ、その必要は無いでしょう」

 助けに行こうとする優気を止めるカルマ。


 男達は一斉にフードを被った人物に襲い掛かった。

 襲い掛かった筈の男達は一瞬で吹き飛ばされた。

「うっ、う~」

「ほらな、変わらなかっただろう?」

「くそっ、このバケモノが・・・」

 そう言って、目に傷がある男性は気を失った。

「ちっ、歯応はごたぇな。喧嘩売るならもう少し実力付けてから来て欲しいぜ」

 フードを被った人物は、その場を去って行った。


「な、何が起きたの?」

「フードを被った人物が一瞬で襲って来た相手を倒していました」

「い、一瞬で」

「もう近くにはいませんが、かなりの実力者でしたね」

「彼、実力は問題無いんだけどね」

 カルマに説明をして貰い、優気は状況を確認する。

 そんな優気とカルマの間に、何故かエルがいた。

「わっ!? エルさん、いつの間に」

「やあ、優気君。おかえり、無事に帰って来てくれて嬉しいよ」

「あ、ありがとうございます。どうして、エルさんがここに?」

「優気君が帰ってくる気配を感じてね。気付いたらここにいたのさ」

「まだ、ギルドに入っていないんですけど」

「別に私の活動範囲はギルドの中だけじゃ無いよ」

「いや、それはそうだと思いますけど」

「それより、こんな時間に来たということは依頼の報告かな?」

「あっ、はい。噂になっている屋敷の調査に行ってきたので、その報告を」

「なるほど、それじゃあ詳しい話しは明日聞くことにしよう」

「えっ? 今からもう少し話しますけど」

「疲れているんだろう? だったら、今日は早く休むと良い」

「ありがとうございます。それじゃあ、お言葉に甘えて」

「うん、気を付けてね」

 エルは、優気達を見送りギルドの自分の部屋に戻る。

 深く椅子に座ると溜め息を吐いた。

「ごめんね、優気君。でも、カルマさんとシルファさんともう1人女の子が増えていたよね。この時間にその子の話しを聞くのは、頭の処理が追いつかない気がするんだ」

 立ち上がり、窓から月を眺め少し笑った。

「優気君には驚かされてばかりだけど、優気君となら彼も仲良く出来るんじゃないかな」

 エレの頭の中には優気とフードを被った人物が浮かんでいた。

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