第27話 3人目をテイムしたら不思議な紋章が浮かびました
「そこの2人をテイムしたって事は、優気、あんたテイマーだったのね」
「う、うん、そうだけど」
優気がテイマーだという事を知り、良い事を思い付いたという顔で優気に近づくエレナ。
「じゃあ、私もテイムしなさい」
「えっ!? エレナも? どうして?」
「何よ、私をテイムするのは嫌だっていうの?」
「嫌っていうか、折角屋敷の外に出られたんだし、もっと自由にした方が良いんじゃないかと思って、それに家族の元に帰るっていう選択も・・・」
「悪いけど、まだ帰るつもりは無いわ」
「それこそ、どうして」
「今、帰ってもきっと他の吸血鬼の皆を困らせるだけだもの。きちんとこの力を制御出来るようになってから帰りたい」
「・・・エレナ」
「だから、私も優気達と一緒に連れて行って♡」
にっこりと笑いかけるエレナにドキドキしながら、どうしようかと考える優気。
「いや、でも、力を制御する事が課題なら僕達と一緒にいなくても・・・」
「言い忘れてたけど、制御するには初めて牙から吸った相手の血を定期的に貰わなくちゃいけないの」
急に耳元で囁かれ思わず後ずさる優気。そんな優気を見て、クスクスと笑うエレナ。
「ふふふっ、だからこれからも一緒にいたいわけよ」
「おい、今のはいくらなんでも近すぎるぞ」
「そうだ、もう少し主殿と距離を取って・・・」
「何よ、屋敷で優気を守ったのはこの私よ? あんた達の代わりにね」
「「ぐふっ」」
グサッと心に刺さる一言をエレナに言われてしまい、その場に崩れ落ちるカルマとシルファ。
「優気の事を守れる力もあるし、役に立てると思うわよ。・・・それとも、やっぱり私といるのは、嫌・・・かしら」
さっきまで笑っていたエレナの顔が一瞬悲しくなるのを見た優気は、このまま別れる事は出来ないと思い、悩んだ末エレナをテイムすることを決めた。
「わ、分かったよ。エレナのことテイムさせて貰うよ」
「ふふっ、優気ならそう言ってくれるって思ってたわ!」
「<<吸血鬼 エレナ>>をテイムしますか?」
久しぶりに出て来たテイム画面を見て、1度深呼吸をした後に優気は答えた。
「はい」
「<<吸血鬼 エレナ>>をテイムしました」
画面でテイム出来た事を確認すると、エレナの体が光に包まれた。それと同時にカルマとシルファの2人も光に包まれた。
光が消えるとエレナの頭に生えていた角が消えていた。エレナは、自分の頭を軽く触って確認する。
「これでテイム出来たの?」
「うん、ステータス画面にちゃんとエレナの名前が書かれているよ」
「そう、確かにちょっと心が暖かいかも・・・」
「そう言えば、カルマ達も光ってたけどどうしてかな?」
「私にも分かりません。特に変わったところは無いと思いますが・・・」
「あっ! 主殿、これを見て下さい」
「わっ! シルファ、いきなり服を脱ごうとしないで!」
シルファが急に服を脱ごうとしているので思わず目を閉じる優気。それに気付いたシルファは、お腹が見える場所で止めた。
「す、すみません。しかし、私のお腹に何か紋章が出て来ておりまして」
「ほ、本当だ」
チラッとシルファが服を全部脱いで無い事を確認して、シルファのお腹の辺りを見てみる。
確かに、丸い円の中に不思議な模様が描かれている紋章があった。
「今までは、こういう紋章みたいなの無かったの?」
「はい、異常が無いか確認していたらこれが・・・」
「あっ、優気様、右手にですが私もシルファと同じ紋章が」
「本当だ、カルマは右手の甲にあるね」
「えっ、ちょっと、待ってよ。あたしそんなの何処にも見当たらないんだけど!? あたしだけ仲間外れ?」
「落ち着いて、エレナ」
「優気様、エレナの首元に何か・・・」
「ん? あっ、エレナにもあったよ。首元にあるから自分で気付けなかったんだよ」
「ほ、本当? あたしだけ形が違ったりしてないわよね?」
「心配しなくても皆同じだ」
「ほっ、良かった~」
「でも、どうして急に紋章が出て来たんだろう?」
「優気様自身は、何処か変わった様子はありませんか?」
「う~ん、特に無いと思うんだけど」
優気は、自分の体にも紋章が無いか確認してみるが特に見つからなかった。
ふと、ステータスが何か変わったのかと思い、画面を開いてみる。すると、職業のテイマーの隣に<上級>という文字が書かれていた。
「えっと、職業テイマーが上級にレベルアップしました。条件は、10体分のモンスターをテイムすることって書いてあるけど・・・エレナ合わせて3人だよね?」
「優気様の実力がすでにそれほどの力量だということですよ」
「流石主殿です」
「いやいや、あんた達ちゃんと考えなさいよ。まあ、普通に考えればあたし達3人でその辺のモンスター10体分になったってことじゃないかしら」
「う~ん、そう考えると改めて3人の凄さを感じるな~」
「紋章のことは何か書かれて無かったの?」
「えっと、<絆の紋章>テイマーレベルが上級になった場合に現れる紋章。効果は・・・あれ?」
「どうしました?」
「効果のところを読もうと思ったんだけど、特に何も書かれていないんだ」
「私達が優気様にテイムされていることを示すためのものということでしょうか?」
「まあ、別に良いんじゃない? 気にしなくても、特に困ることもないでしょうし」
それぞれ、紋章について考えていると、ぐぎゅるるるる~~~~という大きな音が聞こえてきた。
エレナは、その音を聞いて驚いていたが優気とカルマは冷静だった。
「な、何? 今の音」
「慌てなくても大丈夫だ。音の発生源は分かっているから」
「えっ?」
「シルファ、お腹空いちゃったんだね」
「す、すみません」
「ははは、気にしなくて良いよ。依頼でたくさん動いたもんね。早く街に戻ろうか」
「そうですね、途中で倒れられたら困りますし」
「心配するな、店まではもつ・・・・・多分」
「どんだけお腹空いてんのよ」
こうして、エレナを新たに仲間に加えた優気は日が徐々に沈んでいく中、4人で仲良く街に戻っていった。帰り道で、鳴るシルファのお腹の音にエレナは何度か驚いていた。
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