第25話 吸血鬼もやっぱり伝説級のようです
優気、カルマ、シルファの3人は無事合流することが出来た。弱っている優気を見てカルマとシルファは心配していたが、命に別状は無い事を確認しひとまず安堵した。
「優気様、失礼なのですがその者は一体何者なのですか?」
「えっと、彼女はね・・・」
優気は、説明する前にエレナの顔を1度伺った。エレナは、それに気付き、くすっと笑った。エレナの事情を話しても問題無いと分かった優気は、2人が部屋に来るまでに何があったのかを話した。
「なるほど、そんなことが」
「吸血鬼、・・・主殿の血のにおいがしたのはそういうことか」
「エレナには助けて貰ったからお礼もかねてね」
「私は、別に良いって言ったんだけどね。優気がどうしても吸って欲しいって言うから」
「いや、そこまでは・・・言ってないと思うけど」
事情を理解した2人は、エレナに近づき頭を下げた。
「えっ? な、何?」
「優気様を助けてくれてありがとう」
「えっ?」
「私も理由も聞かずに、いきなり襲い掛かってしまいすまなかった。主殿が襲われていると勘違いしてしまい冷静さが掛けていた」
「べ、別に良いわよ。助けたのは偶然だったし、それにあんた達があいつの事を凄く大事にしている事は何となく伝わったから」
エレナは、恥ずかしくなったのか顔を少し赤くして、そっぽを向いた。2人は、顔を上げると優気の近くに戻り、もう一度頭を下げた。
「優気様にも多大なご迷惑をお掛けしました」
「本来なら私達がお守りしなくてはいけなかったのに」
「2人とも顔を上げてよ。元はと言えば僕が弱いのが原因なんだから」
「し、しかし」
「それに、反省するにはまだ早いよ。まず、この屋敷から出る方法を考えなくちゃ」
「そう・・・ですね」
優気の言うとおり、合流こそ出来たが屋敷から出られてはいない。
もう一度状況を整理しようとしていると、エレナが話し掛けて来た。
「ねぇ、少し聞きたいんだけどあんた達ってどういう関係なの? 主従関係だとは思うけれど」
「えっと、何処から説明したら良いのかな」
「話しが長くなるなら今は別に良いけど、そこの2人はどう考えても人間じゃないわよね?」
「その~、カルマは九尾で、シルファはフェンリルっていう種族なんだ」
「やっぱりね、おかしいと思ったのよ」
「あんまり驚かないんだね」
「これでも、一応吸血鬼だからね。人間相手に遅れは取らないしゴブリン程度のモンスターだったら指1本使わずに倒せるわよ」
「そ、そんなに凄い種族だったんだ。あははは」
吸血鬼の凄さを知り、思わず乾いた笑いが出てしまう優気。
「優気のおかげで力も回復してたけれど、止めてくれてなかったら危なかったかもね」
「どうだろうな、貴様は優気様を庇いながら戦っていた」
「それに、まだ力を操りきれていないのではないか? 全快の状態でやったらどうなるか分からん」
「え、えっと~、3人共喧嘩はしちゃダメだからね?」
カルマとシルファが強いことは知っている。しかし、その2人がエレナに対して本気で争った場合どうなるか分からないと考えている。
優気は、心の底から頑張って目覚めて良かったと感じた。
「それで、わざわざ私達の正体を確かめた理由はあるのか?」
「ええ、この屋敷、この空間から確実に出られる為に知りたかったの」
「力が戻ったらって言ってたけど、上手く使えそう?」
「正直、まだ完全には制御出来そうに無いわ。でも、そこの2人の力を借りられれば屋敷から出られると思う」
「それが本当なら協力は惜しまない」
「私もだ、何をすれば良い?」
「私がまず外に出るための入り口を作るわ。ただ、さっきも言ったように完全な力の制御が出来ないから入り口を作ってもすぐに閉じてしまうの」
「それじゃあ、外には出られないね」
「そこで、九尾には私が作った入り口、移動中の空間の維持をお願いしたいの」
「なるほど、この屋敷に閉じ込められたのは私が気付かなかったのが原因だからな。丁度良い」
「フェンリルには、移動中の護衛をお願い。万が一モンスター達が襲ってきた時、私も九尾も相手をしている余裕は無いから」
「了解した。今度こそ守り切ってみせる」
「ぼ、僕にも何か出来ることはある?」
「心配しなくても、あんたにはあんたしか出来ないことがあるわよ」
「何?」
「私達の事を信じること、失敗する可能性だってあるこの作戦に・・・」
「信じるのは当たり前だよ。失敗するなんて思ってない。でも、僕にだって出来る事はあるんじゃないかって」
「ふっ、馬鹿ね。それで良いのよ(誰かに信じて貰える事、それだけでどれだけ心強いか)」
優気は、他にも出来る事があると考えていたが言われたとおり皆を信じ続ける事にした。
「皆で無事に帰ろう」
優気は両手で、3人の手をぎゅっと握り、精一杯の思いを込めた。
カルマ、シルファ、エレナはそれぞれ思いを受け取り必ず成功させると心に決めた。
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