第24話 九尾と銀狼は吸血鬼と対峙します

 優気がエレナに血を分けて気を失う少し前―――

「ちっ、雑魚が多い。こんな奴らの相手をしている場合では無いというのに・・・カルマ、主殿は何処にいるか分かるか?」

「まだ、上手く掴めていないが気配は近づいてきている。危険な状況にはいないようだが」

「安心は出来んな。一刻も早く向かいたいが、力を抑えながらでは時間が掛かる」

「ここの空間の強度がどの位かは分からんが、私達が本気を出して堪えられる物では無いだろう。元の場所に戻れなくなる可能性もある」

「本当に面倒だ」

「・・・優気様、どうかご無事で」

 カルマとシルファの2人は、優気の気配を探りながら屋敷の中を動いていた。モンスターが次々に現れていたが、ものともせず倒していく。

「近い! 優気様の気配を強く感じる」

「何!? 場所は何処だ」

「このまま、真っ直ぐ進め」

「分かった」

 長い廊下には複数の扉があったが、2人は真っ直ぐ奥にある扉に向かった。あと少しでたどり着く所でカルマは異変を感じた。

「どうした?」

「・・・優気様の気が弱くなっている?」

「・・・急ぐぞ!!」

 カルマの言葉を聞いたシルファは、スピードを上げ勢いのまま扉を蹴破った。2人は、部屋の中に入ると優気と見知らぬ存在を確認した。

「な、何!? 一体、何が起こったの?」

「・・・貴様がやったのか?」

「何の話し?」

「貴様から・・・血のにおいを感じる」

「えっ? どうして分か・・・」

 エレナが話し終わる前に、シルファはエレナに飛びかかっていた。エレナは、優気を抱きかかえながら攻撃を避けて距離を取る。

「いきなり攻撃するなんて、何のつもりよ」

「黙れ! 貴様、我が主を食らっただろう」

「人聞き悪い事言わないで、確かにこいつから少し血を分けて貰ったけど・・・って、主?」

 エレナは、状況を整理しようとしていたが今度は複数の火の玉が襲って来た。何とか全て避けたが、カルマが次の魔法を準備しているのをエレナは視認した。

「ちょっと、冗談じゃないんだけど。何なのよ、あんた達」

「その方を、こちらに渡せ。そうすれば、楽に殺してやる」

「何、その言い方。人に物を頼む態度じゃ無いんじゃない? それにこっちの質問にも答えて無いじゃない」

「貴様に話すだけ無駄だ」

「そうかしら? もしかしたら何か勘違いしているかもしれないじゃない?」

 エレナは、2人が優気の仲間であることを気付き始めていた。ただ、確証が得られない為もう少し話しを聞こうとしていた。しかし、カルマとシルファは弱り切っている優気を目の当たりにし、エレナが傷付けたのだと考えていた。

 3人が対立しているのを感じたのか、気を失っていた優気は目を覚まし、エレナから離れた。

「ちょっと!? 起き上がって、大丈夫なの?」

「うん、大丈夫。それに、あの2人には僕からきちんと説明しなくちゃいけないから」

 カルマとシルファの方にゆっくりと歩み寄っていく優気。2人は、優気の方に急いで掛けよった。

「ああ、優気様、よくぞご無事で」

「2人とも、心配掛けてごめんね」

「いえ、私達が主殿を守り切れなかったのが悪いのです。どうか罰を」

「そ、そんなことしないよ!? それに、2人はこうやって僕を探してくれたじゃないか」

「当たり前ではありませんか!! 優気様は、私達の主。例え、この身が朽ち果てようとも探し出してみせます」

「そんな、大袈裟だよ。でも、2人とも本当にありがとう」

 優気の優しい笑顔を見て、カルマとシルファは心の底から安堵あんどし、涙を流した。



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