第22話 吸血鬼に血を分けてあげます
屋敷の調査中モンスターに襲われた所を、吸血鬼の少女エレナに助けて貰った優気。エレナの話しを聞き、原因が彼女にあり、彼女自身も自分の問題を解決しようとしていることを知った。
「全く、優気って変な奴なのね」
「えっ? そ、そうかな?」
「そうよ、会ったばかりの他人の言うことを信じて慰めるんだもの。もし、私が嘘を付いてあんたを騙していたらどうするつもりだったのよ」
「うっ、それは・・・」
エレナの的確な言葉に何も言えなくなる優気。その様子を見てクスッと笑うエレナ。
「まあ、良いわ。きっと、それが優気の良さなのね。でも、私が吸血鬼って言っても驚かなかったわね。大抵の人間は、怖がる筈なんだけど」
「そうなの? 転生してそれなりに時間が過ぎたと思ったけれど、まだまだ知らない事が多いなぁ」
「えっ? 優気って転生者なの?」
「うん、そうだよ」
「ふ~ん、なるほどね。それなら優気が可笑しいのも納得ね」
「ぼ、僕ってそんなに可笑しいかな?」
「そうね、大分可笑しいわ」
「うっ、そ、そっか」
「そんなに落ち込まないの、良い意味で可笑しいってことだから」
「良い意味でか・・・まあ、エレナがそう言うなら」
「それで? これからどうするの? モンスターに襲われてたって事は優気そんなに強く無いんでしょ?」
「うぐっ! は、はい、その通りです」
「あ、ごめん、別に悪く言うつもりは無くて、ただそうなるとこの部屋から出るのはやっぱり辞めた方が良いと思うのよね。優気の仲間が来てくれるのを待つ方が良いと思うんだけど」
「エレナの言うとおりだとは思うんだけど、2人が必死に探してくれているかもしれないのにここでジッとしておく訳にも・・・」
「う~ん、私の体力が全快だったら一緒について行ってモンスターを倒してあげられるんだけど」
「でも、エレナは外に出れないんじゃ」
「だから、優気が仲間と合流したらこの部屋に戻るわよ」
エレナは、自分が外に出れないことを気にしておらず、優気をどうにか屋敷の外に出してあげたいと考えていた。しかし、優気は外に出れないエレナに迷惑を掛ける事を悩んでいた。
「もう、そんな顔しないでよ。私がやりたくてやることなんだから」
「でも・・・」
「あくまで体力が全快だったの話しよ。それに全快になったら私も勢いで出られるかもしれないしね」
「そうだね、回復させる方法はあるの?」
「えっ? まあ、あるにはあるけど」
「どうしたら良いの?」
真剣な眼差しで見てくる優気に対して、どうするべきか悩んでいるエレナだったが優気に伝える事にした。
「血を吸うんだよ」
「えっ?」
「だから、あんたの血を吸えば多分回復するって言ってるのよ」
「僕の血を?」
「や、やっぱり今の無し! いきなり血を吸ったらなんて気持ち悪いわよね」
「良いよ、僕の血で良ければ吸っても」
「そうよね、ごめんなさい。変な事言って・・・って、はっ?」
「血を吸うってなると、牙で吸われるのかな。あまり痛いのは得意じゃないけど、それでエレナが元気になるなら」
「あ、あんた馬鹿なの!? さっきの私の話聞いてた? 血を吸いすぎてしまうから危ないって」
「でも、僕を助けてくれた時に力の制御は出来るようになったんじゃ?」
「だから、あれは偶然で・・・」
「やってみようよ、エレナなら大丈夫だよ」
「・・・本当、何で私のことなんか信じられるのよ」
「何か言った?」
「何でも無いわよ」
優気が真っ直ぐに自分を見ていること不思議に思う中、少し嬉しさもあるエレナ。だからこそ、もしも傷付けてしまったらと考え、行動をためらってしまう。しかし、会ったばかりの自分を信じ切っている優気を見て覚悟を決めた。
「・・・牙で吸うから痛いかもしれないわよ」
「我慢するよ」
「・・・首から吸うけど大丈夫?」
「少し恥ずかしいけど、多分大丈夫」
「普通、怖がると思うんだけど」
「あっははは・・・確かに、そうかも」
優気に対して少し呆れるエレナだったが、すぐに笑みを浮かべた。
「それじゃあ、行くわよ」
「うん、頑張って」
「いや、だから何であんたが応援してんのよ・・・全く」
エレナの顔が少しずつ近づいて来て、思わず目を瞑る優気。エレナは、1度呼吸を整えてから優気の首に噛みついた。
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