第21話 モンスターから助けてくれたのは赤髪の吸血鬼でした
ギルドの依頼で屋敷の調査に向かった優気達。屋敷の中に入ると別の空間に飛ばされてしまい、そこでモンスター達に襲われてしまう。優気を助けようと力を使ったカルマだったが優気の姿が消えてしまった。
「そんな・・・優気様、わた、し、私のせいで・・・」
「馬鹿なことを言うな。私達の力で主殿がいなくなってしまう訳がないだろう」
「し、しかし・・・」
「冷静になってよく気配を探ってみろ。弱ってはいるが、主殿はこの空間の何処かにいる」
「た、確かに、優気様の気配を感じる」
「分かったか? 分かったなら急いで探すぞ。主殿が危険な状態であることには変わりない」
「そうだな。すまない、迷惑を掛けた」
「ふん、全ては主殿の為だ。私1人で探すよりも早く見つけ出せるからな。分かったなら行くぞ」
「ああ。・・・・待っていて下さい、優気様」
「・・・ん、一体どうなって」
「起きた?」
「うわっ!?」
気を失っていた優気が目を覚ますと、赤い瞳と赤い髪をした少女がのぞき込んでいた。驚いた優気は、体を起こしてすぐに距離を取った。いきなり現れた少女は、長い髪を2つに結んでおり、少し露出の多い服を着ていた。
「だ、誰ですか?」
「失礼ね、そんなに驚くこと無いじゃない。折角助けてあげたのに」
「えっ? ・・・そう言えば、モンスターに襲われてたんだっけ。あの、助けて頂いてありがとうございます」
「ふん、どういたしまして」
優気が驚いたことが気に障ったのか、少し少女の機嫌が悪そうに見える。
「僕、優気って言います。良ければ、お名前を教えて貰えませんか?」
「エレナよ」
「エレナさんですね」
「さんは付けなくて良い、さん付けで呼ばれると何だか気持ち悪い。それと敬語も要らないから」
「えっと、わかりま・・・分かったよ、エレナ。改めて助けてくれてありがとう」
「まあ、あんたを助けたのにはちゃんと理由があるんだけどね」
「理由?」
「気にしないで、それよりあんた他にも仲間がいるんじゃないの?」
「そうだ! カルマとシルファを探さなきゃ。金色の髪をした女性と銀色の髪をした女性を知らない? 一緒に屋敷に入って来たんだけど」
「さあね、私はモンスターに襲われて弱った気配があったからそいつを引っ張ったらあんただった訳」
「そっか、2人とも無事だと良いんだけど・・・」
「先に言っておくけど、この部屋から出て探しに行くなんてことはしない方が良いわよ」
「そう言えば、この部屋は雰囲気が違うよね」
部屋の中は全体的に明るく、机や椅子、ベッドなど綺麗な形で残っていた。カレンは、大きな胸を支えるように腕を組み、壁に寄りかかりながら優気の方を見ていた。
「エレナは、ここに住んでいるの?」
「・・・住みたくて住んでいる訳じゃないわ」
「どういうこと?」
「・・・あんたはどうしてここに来たの?」
「えっ? 依頼されたんだよ。この屋敷に近づくと倒れる人がいるから原因が何なのか調べて欲しいって」
「そう、外ではそんな事が起きていたのね」
「何か知っている?」
「知っているも何も原因は私よ。私はね、
「吸血鬼?」
「吸血鬼は、自分以外の血を吸う事で栄養を摂取したり身体を強化させたり出来るんだけど、誰かを殺すほどの血を吸う事は無いの」
優気を見ていたエレナは、少し視線を降ろしてから話しを続ける。
「でも、私の場合は牙を使わなくても近づいた者全てから勝手に血を吸ってしまうの。同族ももう少しで殺してしまう所だった。その事を知った私のお父さんは、自分で力を操れるまでこの屋敷に閉じ込めておくことにしたの」
「そんな、そこまでしなくても」
「仕方無いのよ、お父さんは吸血鬼の代表だったから。自分の娘だからといって甘やかすわけには行かなかったことは小さかった私でも分かるもの」
「ちょっと待って、カレンはどの位ここにいるの?」
「もう10年は経ったと思うわ。それだけ経っても未だに力をコントロール出来ないなんて情けないわね」
「そんな事ない!」
いきなり大きな声を出した優気に一瞬驚くエレナ。
「な、何よ、急に」
「エレナは、凄いよ。子供の頃からずっとここに居て、何とかしようと1人で頑張ったんでしょ? 誰にでも出来る事じゃないよ」
「そんな事言わないで、私は別に凄く無い。お父さんにも他の人にも迷惑を掛けた」
「でも、僕はエレナに助けて貰ったよ? エレナに助けて貰えなかったら死んでたかもしれない」
「そんなの偶然よ。上手く助けられる保証なんて無かったんだから。それに、私の力がどうなったのか試そうとしただけで」
「それじゃあ、成功だね。血を吸われている感じもしないし、僕めちゃくちゃ元気だし」
エレナが視線を優気に戻し目が合うと、ニコッと笑った優気の笑顔が見えた。組んでいた腕をほどき戸惑っている様子のエレナ。優気は、ゆっくりと近づいてエレナの両手を握った。
「エレナは、きっと優しい人なんだね」
「私は、別に優しくなんか」
「誰も傷付けないように、力を操れるようにしていたんだよね。1人でよく頑張ったね」
「・・・何よ、会ったばかりのくせに分かったような事聞かないでよ」
「ごめんね、でも、本当に凄いと思ったんだ」
「・・・私に助けられてくせに」
「うん、ありがとう助けてくれて。エレナは、優しいね」
「うっ、ううっ」
エレナの声は何かを我慢しているように聞こえ、肩も少し震えていた。
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