第20話 古いお屋敷には誰かがいるみたいです
ギルド内で噂になっていた古い屋敷を調べるため、正式にギルドの依頼を受けることにした優気達。
屋敷に向かう途中には、モンスターもいるので気合いを入れていた優気だったが。
「シルファ、手を貸してやろうか」
「いらん、こんな雑魚共、私1人で十分だ。お前は、主殿を守ることに集中していれば良い」
「ならばお言葉に甘えてそうさせて貰おう。優気様、モンスターはシルファが全て片付けてくれるそうなので我々は見物といきましょう」
「シルファ1人で大丈夫なの?」
「問題無いでしょう。それにもう片付いたようですし」
気付けば、襲ってきたモンスターは全てシルファが倒していた。人の姿で戦っていたが、涼しい顔で汗1つかいていなかった。
シルファの事を心から凄いと感じながらも、優気は自分が不甲斐ないとも感じていた。軽く溜め息を吐いていると、シルファが笑顔で近づいてきた。
「主殿、私の戦いはどうでした?」
「強すぎて驚いたよ。シルファは、人の姿のままでも戦えるんだね」
「そうですね、この体にも随分と慣れて来ましたし、それに・・・」
「それに?」
「この姿だと元の姿の時よりも、主殿を近くに感じられるんです」
「そっか、僕は銀狼の姿も人の姿も、どっちのシルファも大好きだよ」
「ありがとうございます」
近くに人がいない時は、耳や尻尾をだしているカルマやシルファだが、優気の言葉でシルファの尻尾は左右に何回も揺れていた。
「さあ、主殿、行きましょう」
「あっ、待って」
「どうしました?」
優気は、シルファの右腕に小さいが傷を見つけて、回復魔法を掛けた。
「これで良し」
「このくらいなら、大したことありませんでしたよ?」
「シルファは、そうかもしれないけど、僕が嫌だったんだ。小さくても傷が残ったら大変でしょう?」
「本当にありがとうございます」
「優気様、どうやら目的地に着いたようです」
シルファの傷を治していたら、カルマが屋敷を見つけていた。すぐに、カルマの元に向かうと、昼間なのに薄気味悪い屋敷が確かにそこにはあった。
「本当だ、随分と古いお屋敷だね」
「はい、外から見ている分には誰も住んでいる様子は感じられないのですが」
「もしかして、誰かいるの?」
「確証はありませんが、何かがいるのは間違いないかと」
「それが原因なのかな? だとしたら入って調べてみないと」
「私が見て来ましょうか? 優気様はここでシルファと待っていらしても」
「ううん、一緒に行くよ。正直、怖いけど。カルマを1人で行かせて何かあったら僕は後悔すると思うから」
「優気様・・・。優気様にそこまで思って貰える私は幸せ者ですね」
「そんな、大袈裟だよ」
「ふふふ、いえ、私にとっては大きなことです。それでは、一緒に参りましょう」
「うん」
3人は、慎重に屋敷の中に入っていった。確かに古いが、外で見ていたような、今にも崩れてしまいそうな様子は無かった。
「静かだね、灯りとかついてないように見えるけど意外と屋敷の中は詳しく見えるね」
「主殿、扉が開いているからでは?」
「あ、そうか、扉を開けたままにしておいたんだっけ?」
「いえ、その扉ならすでに閉ざされていますよ」
後ろを振り返ると、確かに扉が閉まっていた。何の音も立てずに閉まったので、優気もシルファも気付いておらず、唯一カルマだけが気付いていた。
「分かっていたなら、何故教えなかったのだ」
「教えても無駄だったからだ」
「どういうこと?」
「どうやら、私達は屋敷に入った時点で何処か別の空間に飛ばされてしまったようなんです」
「別の空間?」
「はい、一時的に誰かが作った世界とでも言えば良いでしょうか。その世界に私達は入ってしまったんです」
「う~ん、別の世界か、ちょっとよく分からないけど、大変な状況だったりするのかな?」
「申し訳ありません、優気様だけでもすぐに外に出られるようにするべきだったのですが、私もすぐには気付けず優気様を危険な場所に」
「気にしないでよ、カルマ。どうやったら出られるのかは、まだ分からないけど、3人一緒なら何とかなるよ」
「優気様、しかし」
「はい、反省するのはまた後で、今はまだ屋敷の調査中なんだから気合いを入れる。ねっ?」
「・・・はい、分かりました」
気を落としていたカルマを、何とか気持ちを切り替えさせる事が出来た。
気を取り直して、屋敷の中を探索していこうとしていると、黒い影のようなモンスターが突然現れ襲い掛かって来た。
「何だ、こいつらは」
「気を付けろよ、カルマ。普通のモンスターとは違うようだぞ」
「ああ、分かっている。優気様、私の後ろに」
「大丈夫、僕も戦えるよ」
3人に襲い掛かるモンスター、一体ずつ確実に倒していくが数が減る様子が無い。カルマとシルファはまだ余裕があったが、徐々に優気の体力は減っていく。
「しまった、優気様から少しずつ離れてしまっている。シルファ、私の代わりに優気様をっ!」
「ダメだ! 私も近づけない! くそっ、数も増えていっている」
「優気様! 聞こえますか! 待っていて下さい! すぐにおそばに戻ります!」
「だい・・・じょうぶ、まだ、やれるから」
動きも悪くなり、声も小さくなっている。そして、モンスターが一体優気にしがみつくと次々にのしかかっていき、モンスターの下敷きになってしまった。
その光景を見た、カルマが優気を巻き込まないように抑えていた力を解放し、その場にいるモンスターを全て焼き払った。
「優気様! 優気様!!」
「主殿! ・・・いない?」
「そ、そんな、あ、ああ、ああああああああ~~~~~~!!!!!!!!!」
カルマが放った炎によって、モンスター達はいなくなったが、優気の姿もそこにはいなかった。
モンスターに殺されてしまったのか、それともカルマの炎に焼かれてしまったのか。
優気がいた筈の場所には何も残っておらず、カルマの悲痛の叫びが屋敷中に響いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます